生体部分肝移植後早期に妊娠出産し得た胆道閉鎖症の1例
胆道閉鎖症術後,結婚し挙児希望のある25 歳女性.代償性肝硬変の状態により,小腸内腔に突出する大きな静脈瘤を認めていた.胆管炎による入院を契機に肝移植に関する情報提供を開始し,5 か月後に63 歳の父をドナーとする生体部分肝移植を施行した.術後は門脈血流不良,小腸穿孔,腸閉塞,胆管空腸吻合縫合不全のため計3 回の再開腹手術を要し,術後94 日目に退院した.肝移植5 か月後に残存した小腸静脈瘤の塞栓術を施行した.肝移植2 年後に妊娠し,母子ともに大きな問題なく妊娠38 週1 日に経腟分娩で健児を得た.慢性肝障害・肝硬変を有している胆道閉鎖症術後の成人症例では,妊娠・出産に大きなリスクを伴う.肝移...
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Published in | 日本小児外科学会雑誌 Vol. 52; no. 5; pp. 1103 - 1107 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
20.08.2016
日本小児外科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0288-609X 2187-4247 |
DOI | 10.11164/jjsps.52.5_1103 |
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Summary: | 胆道閉鎖症術後,結婚し挙児希望のある25 歳女性.代償性肝硬変の状態により,小腸内腔に突出する大きな静脈瘤を認めていた.胆管炎による入院を契機に肝移植に関する情報提供を開始し,5 か月後に63 歳の父をドナーとする生体部分肝移植を施行した.術後は門脈血流不良,小腸穿孔,腸閉塞,胆管空腸吻合縫合不全のため計3 回の再開腹手術を要し,術後94 日目に退院した.肝移植5 か月後に残存した小腸静脈瘤の塞栓術を施行した.肝移植2 年後に妊娠し,母子ともに大きな問題なく妊娠38 週1 日に経腟分娩で健児を得た.慢性肝障害・肝硬変を有している胆道閉鎖症術後の成人症例では,妊娠・出産に大きなリスクを伴う.肝移植後の妊娠・出産に関しては安全にできるという報告が増えているが,挙児希望を理由に肝移植を施行することは一般的ではない.次世代を生み育てるまでの“成育医療”という観点で示唆に富む症例と思われ,ここに報告する. |
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ISSN: | 0288-609X 2187-4247 |
DOI: | 10.11164/jjsps.52.5_1103 |