インフリキシマブ投与中にリステリア髄膜脳炎を発症した成人スチル病の1例

症例は,22歳女性.2005年6月頃に高熱,関節痛および四肢に皮疹が出現し,近医皮膚科を受診した.その際の血液検査で肝機能障害を指摘され,翌日同院内科に入院となった.CRPは著明に高値を呈したが,感染徴候はなく,骨髄像も正常であった.持続する39℃以上の発熱,皮疹,白血球増加,咽頭痛,脾腫,肝機能障害,血液検査で自己抗体陰性,高フェリチン血症を認めたことから,成人スチル病と診断された.プレドニゾロン30 mg/日より治療が開始されたが,無効であり,ステロイドパルス療法を実施,加療継続のため7月中旬に当科転院となった.ステロイドとシクロスポリンの併用により,活動性のコントロールを試みたが,高フェ...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 29; no. 3; pp. 160 - 168
Main Authors 小原, 美琴子, 高橋, 裕樹, 宮本, 千絵, 苗代, 康可, 山本, 元久, 鈴木, 知佐子, 今井, 浩三, 篠村, 恭久, 野中, 道夫, 山本, 博幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2006
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.29.160

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Summary:症例は,22歳女性.2005年6月頃に高熱,関節痛および四肢に皮疹が出現し,近医皮膚科を受診した.その際の血液検査で肝機能障害を指摘され,翌日同院内科に入院となった.CRPは著明に高値を呈したが,感染徴候はなく,骨髄像も正常であった.持続する39℃以上の発熱,皮疹,白血球増加,咽頭痛,脾腫,肝機能障害,血液検査で自己抗体陰性,高フェリチン血症を認めたことから,成人スチル病と診断された.プレドニゾロン30 mg/日より治療が開始されたが,無効であり,ステロイドパルス療法を実施,加療継続のため7月中旬に当科転院となった.ステロイドとシクロスポリンの併用により,活動性のコントロールを試みたが,高フェリチン血症の増悪,肝障害の出現を認め,2回目のステロイドパルス療法を実施した.一時的に症状は改善を認めるものの,ステロイド減量困難であることから,シクロスポリンをメトトレキサートに変更し,インフリキシマブの投与を開始した.経過中,ST合剤の処方を開始したが,薬剤性肝障害も疑われたため,中止した.8月下旬に2回目のインフリキシマブ投与を実施し,速やかに臨床症状および検査値異常の改善を認めた.しかし9月上旬に突然,高熱と頭痛が出現したため,髄液検査,血液・髄液培養および頭部MRI撮影を実施した結果,リステリア髄膜脳炎と診断した.経過中,複視および意識障害が出現し,画像上,脳膿瘍の形成を認めたが,長期間にわたるアンピシリンとゲンタマイシンの併用療法により治癒することができた.成人スチル病に対しては,インフリキシマブ投与は中止し,二重膜濾過血漿交換を併用することで,ステロイド剤の減量をはかることが可能であった.その後,症状の再燃,血液検査値異常の出現は認めず,2005年12月に当科退院となった.リウマチ性疾患の治療は,生物学的製剤の出現により,従来の治療では抵抗性を示していた病態における治療成績の劇的な改善が得られている.しかし一方,日和見感染症の発症も大きな問題であり,十分な予防と対策が必要になる.今回,私たちはステロイド依存性の成人スチル病に対してインフリキシマブを投与中,リステリア髄膜脳炎を発症した一例を経験した.リステリア症も,結核と同様に,今後注意すべき合併症の一つとして考えられるため,考察を加え報告する.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.29.160