神経幹細胞を用いた中枢神経系の再生医療

「はじめに」19世紀初頭からの長きに渡り, 一度損傷を受けた哺乳類の中枢神経は再生しないと信じられてきた. これは, 神経細胞の新生が周産期以降は起こらないと考えられてきたからである. もともと哺乳類の中枢神経系は, 発生過程において多分化能と自己再生能力を有する神経幹細胞から非対称性分裂や分泌性因子を含む巧妙かつ複雑な細胞間相互作用の結果として生じたものであるが, ここ十数年の中枢神経系の幹細胞生物学の急速な発展により, その神経幹細胞が胎生期のみならず成体にもこの神経幹細胞が存在することが明らかとなり, さらにそれらを分離培養・増殖することが可能となった. 特に, 神経幹細胞の持つ多分化能...

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Published in炎症・再生 Vol. 24; no. 6; pp. 602 - 610
Main Authors 岡野, 栄之, 石井, 賢, 岡田, 誠司, 岩波, 明生, 中村, 雅也, 戸山, 芳昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本炎症・再生医学会 2004
日本炎症・再生医学会
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ISSN1346-8022
1880-5795
DOI10.2492/jsir.24.602

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Summary:「はじめに」19世紀初頭からの長きに渡り, 一度損傷を受けた哺乳類の中枢神経は再生しないと信じられてきた. これは, 神経細胞の新生が周産期以降は起こらないと考えられてきたからである. もともと哺乳類の中枢神経系は, 発生過程において多分化能と自己再生能力を有する神経幹細胞から非対称性分裂や分泌性因子を含む巧妙かつ複雑な細胞間相互作用の結果として生じたものであるが, ここ十数年の中枢神経系の幹細胞生物学の急速な発展により, その神経幹細胞が胎生期のみならず成体にもこの神経幹細胞が存在することが明らかとなり, さらにそれらを分離培養・増殖することが可能となった. 特に, 神経幹細胞の持つ多分化能や障害部への遊走能といった特性は, これまで治療がほとんど不可能と考えられていた様々な疾患に対して将来の有望な治療法となる可能性があり, こうした内在性あるいは移植した神経幹細胞を用いて, 変性や損傷により破綻した中枢神経系を再生し, 機能修復を目指した再生医学の気運が高まっている.
ISSN:1346-8022
1880-5795
DOI:10.2492/jsir.24.602