TNF遮断薬が有効であった小児期発症ベーチェット病の2症例

ベーチェット病の治療は合併する臓器障害とその重症度により様々である.小児例は,全身症状が比較的強く,ステロイド剤や免疫抑制薬が治療の主体となるが,これらが奏効しない難治例もある.近年,Tumor necrosis factor alpha (TNF-α) がベーチェット病の病態に深く関与することが判明し,TNF遮断薬の有用性が注目されている.当科においてTNF遮断薬が有効であった小児期発症ベーチェット病の2症例を経験したので報告する.症例1は18歳男性.8歳時にベーチェット病を発症し,17歳時より腹痛,下痢,血便が出現した.食道下部,大腸に潰瘍病変を認め,腸管ベーチェットと診断された.ステロイ...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 33; no. 3; pp. 157 - 161
Main Authors 金子, 詩子, 岸, 崇之, 菊地, 雅子, 原, 良紀, 篠木, 敏彦, 宮前, 多佳子, 今川, 智之, 森, 雅亮, 横田, 俊平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2010
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Summary:ベーチェット病の治療は合併する臓器障害とその重症度により様々である.小児例は,全身症状が比較的強く,ステロイド剤や免疫抑制薬が治療の主体となるが,これらが奏効しない難治例もある.近年,Tumor necrosis factor alpha (TNF-α) がベーチェット病の病態に深く関与することが判明し,TNF遮断薬の有用性が注目されている.当科においてTNF遮断薬が有効であった小児期発症ベーチェット病の2症例を経験したので報告する.症例1は18歳男性.8歳時にベーチェット病を発症し,17歳時より腹痛,下痢,血便が出現した.食道下部,大腸に潰瘍病変を認め,腸管ベーチェットと診断された.ステロイドや各種免疫抑制薬が奏効せず,強い消化器症状が持続したため,インフリキシマブを導入した.腹部症状の著明な改善とともに,皮膚,粘膜症状も軽快した.症例2は9歳女児.4歳時から口内炎と毛嚢炎を反復し,6歳時にベーチェット病と診断された.ステロイドやコルヒチン,メトトレキサート等による治療が行われたが,発熱,皮膚粘膜症状,関節痛が遷延した.8歳時にエタネルセプトを開始したところ,諸症状の改善が得られ,ステロイドからの離脱が可能であった.本疾患における生物学的製剤の導入には,適応や安全性,長期予後等の問題があるが,既存治療に抵抗する難治例に対して,有効な治療法であると考えられた.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.33.157