パクリタキセル施行乳がん患者における末梢神経障害の発症頻度と危険因子に関する検討

「緒言」 パクリタキセル(タキソール(R))は, 1971年に太平洋イチイtaxus brevifoliaの樹皮の抽出物から単離された物質である1). その後, チューブリン重合を促進することにより微小管を安定化させ, 細胞分裂を阻害する特徴的な抗腫瘍効果発現機序が明らかとなり1), 現在では乳がんのほか, 卵巣がんや肺がん, 胃がんなど種々の悪性腫瘍に対して欠くことのできない薬剤となっている. しかし, パクリタキセルは末端部に対称性に生じる感覚症状や, 靴下・手袋型分布の知覚異常などの末梢神経障害を高頻度で発症する1~2). これらは, 重篤な過敏反応や骨髄抑制とは異なり生命予後に直接影響...

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Published in医療薬学 Vol. 38; no. 6; pp. 359 - 364
Main Authors 佐瀬, 一洋, 松田, 絹代, 齊藤, 光江, 村山, 哲史, 原田, 好子, 津田, 泰正, 閔, 貴善, 吉田, 久博, 田嶋, 美幸, 佐藤, 邦義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本医療薬学会 10.06.2012
日本医療薬学会
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ISSN1346-342X
1882-1499
DOI10.5649/jjphcs.38.359

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Summary:「緒言」 パクリタキセル(タキソール(R))は, 1971年に太平洋イチイtaxus brevifoliaの樹皮の抽出物から単離された物質である1). その後, チューブリン重合を促進することにより微小管を安定化させ, 細胞分裂を阻害する特徴的な抗腫瘍効果発現機序が明らかとなり1), 現在では乳がんのほか, 卵巣がんや肺がん, 胃がんなど種々の悪性腫瘍に対して欠くことのできない薬剤となっている. しかし, パクリタキセルは末端部に対称性に生じる感覚症状や, 靴下・手袋型分布の知覚異常などの末梢神経障害を高頻度で発症する1~2). これらは, 重篤な過敏反応や骨髄抑制とは異なり生命予後に直接影響を及ぼすことはないものの, 日常生活に支障を生じるほど重症化することもある. そのため, QOLが低下することによりしばしば抗がん剤投与の継続中止が余儀なくされることがある3). これらのパクリタキセルによる末梢神経障害の発症には, 動物実験やin vitro実験の結果, 神経節の障害や軸索変性, 脱髄などが発症に関与するとされている2).
ISSN:1346-342X
1882-1499
DOI:10.5649/jjphcs.38.359