めまい・平衡障害症状の表現における音象徴語

[緒言]めまい・平衡障害の自覚症状を表現するための的確で理解しやすい言葉を見つけることは実は難しい. 日本の診察室では, 「ぐるぐる」回るとか「ふらふら」して困るとかいう言葉がよく聞かれるが, これらの言葉を我々臨床医はどのように扱ったらよいかについて, 納得のゆく記述を成書や文献に見つけることは難しい. しかし, 例えば痛みについては, それを表現する音象徴語あるいは擬態語が主観的感覚尺度と, 何らかの対応関係をもつことが示唆されており1), めまい・平衡障害という症状における, このような語彙の意義に興味が持たれる. 言語以外の, 音による情報伝達は, ヒト以外の哺乳類, 鳥類, 両生類に...

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Published inEquilibrium Research Vol. 70; no. 4; pp. 223 - 229
Main Authors 村井, 紀彦, 高橋, 由佳, 井口, 福一郎, 谷口, 善知
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本めまい平衡医学会 2011
日本めまい平衡医学会
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ISSN0385-5716
1882-577X
DOI10.3757/jser.70.223

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Summary:[緒言]めまい・平衡障害の自覚症状を表現するための的確で理解しやすい言葉を見つけることは実は難しい. 日本の診察室では, 「ぐるぐる」回るとか「ふらふら」して困るとかいう言葉がよく聞かれるが, これらの言葉を我々臨床医はどのように扱ったらよいかについて, 納得のゆく記述を成書や文献に見つけることは難しい. しかし, 例えば痛みについては, それを表現する音象徴語あるいは擬態語が主観的感覚尺度と, 何らかの対応関係をもつことが示唆されており1), めまい・平衡障害という症状における, このような語彙の意義に興味が持たれる. 言語以外の, 音による情報伝達は, ヒト以外の哺乳類, 鳥類, 両生類にもみられるが, これら多様な種における音による情報伝達に広く共通してみられる一つの特性に, 「周波数コードfrequency code」と呼ばれる, 情報の記号化手法がある. 身体周縁部の体毛によって自身の身体を実際より大きく見せるという行動が, 性選択を通じて進化的価値を有するのと同様に, より低い音を立てることで, 実際より大きいサイズの振動体, ひいては実際より大きなサイズの身体を有するように, 情報の伝達相手に対して装う能力も進化的価値をもつと考えられる2).
ISSN:0385-5716
1882-577X
DOI:10.3757/jser.70.223