酸性条件下で凝集沈澱するIgG4-λ型M蛋白が引き起こしたアルブミン測定への影響

はじめに 日常検査において矛盾や関連項目間での乖離など, しばしば患者の病態を反映しない異常値に遭遇することがある. 特に生化学検査では血中に存在するM蛋白がその引き金になりうることが知られており, M蛋白が測定試薬成分と反応し, 不溶性の凝集・沈澱物を形成することで反応系に影響を及ぼし異常値の原因となる. 本稿では我々が経験したM蛋白の影響によってアルブミンの測定値が総蛋白よりも高値を示すという矛盾を呈した症例の解析例1~3)を紹介する. 症例発見の端緒 症例は平成10年12月に長野市民病院に入院しS状結腸癌と診断された81歳の男性である. 入院時検査(Table1)で, 血清総蛋白8.8g...

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Published in生物物理化学 Vol. 51; no. 4; pp. 231 - 235
Main Authors 栢森, 裕三, 康, 東天, 青木, 義政, 藤田, 清貴, 亀子, 光明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本電気泳動学会 2007
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ISSN0031-9082
1349-9785
DOI10.2198/sbk.51.231

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Summary:はじめに 日常検査において矛盾や関連項目間での乖離など, しばしば患者の病態を反映しない異常値に遭遇することがある. 特に生化学検査では血中に存在するM蛋白がその引き金になりうることが知られており, M蛋白が測定試薬成分と反応し, 不溶性の凝集・沈澱物を形成することで反応系に影響を及ぼし異常値の原因となる. 本稿では我々が経験したM蛋白の影響によってアルブミンの測定値が総蛋白よりも高値を示すという矛盾を呈した症例の解析例1~3)を紹介する. 症例発見の端緒 症例は平成10年12月に長野市民病院に入院しS状結腸癌と診断された81歳の男性である. 入院時検査(Table1)で, 血清総蛋白8.8g/dl(Biuret法)に対しアルブミンが9.2g/dl(BCG法)と総蛋白を上回り, さらに, 直接ビリルビンがマイナス値(-6.2mg/dl, 酵素法)を示す測定結果が得られた. このとき, 分析装置での反応タイムコースを確認すると, アルブミン, 直接ビリルビンはもとより, 血清鉄(25μg/dl, Nitroso-PSAP直接比色法)においても異常反応が観察された(Fig. 1).
ISSN:0031-9082
1349-9785
DOI:10.2198/sbk.51.231