一酸化窒素と循環器病:遺伝子改変動物から得られた新知見

一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase:NOS)には,神経型NOS,誘導型NOS,内皮型NOSの3種類のアイソフォームが存在する.従来,生体内におけるNOS系の役割が,NOS阻害薬を用いて薬理学的に広く検討されてきた.しかし,NOS阻害薬はさまざまな非特異的作用を有するため,NOS系の真の役割は,いまだ十分に解明されていない.この点を検討するために,著者らは,NOS系完全欠損マウスを世界に先駆けて開発した.興味深いことに,このマウスには,高度の冠動脈硬化を伴う自然発症の急性心筋梗塞が認められた.さらに,このマウスには,代謝症候群,高脂血症,拡張期心不全の病態も見出された...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 32; no. 7; pp. 835 - 841
Main Author 筒井, 正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 2012
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.32.835

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Summary:一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase:NOS)には,神経型NOS,誘導型NOS,内皮型NOSの3種類のアイソフォームが存在する.従来,生体内におけるNOS系の役割が,NOS阻害薬を用いて薬理学的に広く検討されてきた.しかし,NOS阻害薬はさまざまな非特異的作用を有するため,NOS系の真の役割は,いまだ十分に解明されていない.この点を検討するために,著者らは,NOS系完全欠損マウスを世界に先駆けて開発した.興味深いことに,このマウスには,高度の冠動脈硬化を伴う自然発症の急性心筋梗塞が認められた.さらに,このマウスには,代謝症候群,高脂血症,拡張期心不全の病態も見出された.以上より,NOS系が多彩な循環器病の成因に重要な役割を果たしていることが示唆された.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.32.835