破骨型多核巨細胞を伴う退形成癌の1例

症例は67歳男性.腹部膨満感を主訴に近医を受診,左上腹部に巨大な腫瘤を指摘され当院を紹介受診した.腹部CTでは充実性腫瘤と嚢胞成分が混在する,最大径20cmの膵体尾部腫瘍を認めた.腫瘍は左上腹部を占拠しており,胃や横行結腸,左腎など多臓器に接し,上腸間膜動脈や腹部大動脈とも近接していたが,腫瘍辺縁の境界は明瞭で膨張性発育にみえ,遠隔転移もないことから手術を企図した.開腹すると,腫瘍は巨大であったが可動性は良好であり,横行結腸合併切除を含む尾側膵切除術にて肉眼的根治切除を達成した.病理では未分化な癌細胞の増殖に加え,CD68陽性の破骨細胞様多核巨細胞が散見され,破骨型多核巨細胞を伴う退形成癌と診...

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Published in膵臓 Vol. 34; no. 2; pp. 114 - 121
Main Authors 伊藤, 康博, 藤崎, 洋人, 岸田, 憲弘, 松田, 圭央, 松井, 淳一, 清水, 和彦, 高橋, 孝行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.04.2019
Subjects
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.34.114

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Summary:症例は67歳男性.腹部膨満感を主訴に近医を受診,左上腹部に巨大な腫瘤を指摘され当院を紹介受診した.腹部CTでは充実性腫瘤と嚢胞成分が混在する,最大径20cmの膵体尾部腫瘍を認めた.腫瘍は左上腹部を占拠しており,胃や横行結腸,左腎など多臓器に接し,上腸間膜動脈や腹部大動脈とも近接していたが,腫瘍辺縁の境界は明瞭で膨張性発育にみえ,遠隔転移もないことから手術を企図した.開腹すると,腫瘍は巨大であったが可動性は良好であり,横行結腸合併切除を含む尾側膵切除術にて肉眼的根治切除を達成した.病理では未分化な癌細胞の増殖に加え,CD68陽性の破骨細胞様多核巨細胞が散見され,破骨型多核巨細胞を伴う退形成癌と診断された.退形成癌は浸潤性膵管癌の1亜型でまれな疾患である.今回我々は最大径20cmの1手術例を経験したため,文献的考察を含めて報告する.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.34.114