重篤な急性輸血副作用に関する多施設共同研究

背景: 輸血による細菌感染症,輸血関連急性肺障害(TRALI)などは,原因製剤を回収して,必要な検査を実施しなければ副作用の原因を特定できない.しかし,病院内での原因製剤の回収を含む調査体制が確立していないため,これらの副作用が原因不明のままとなっている可能性がある. 方法: 原因製剤の回収を含めた標準的な原因検索方法を作成し,大規模病院50施設において急性輸血副作用の調査を2005年から2006年に実施した. 結果: 調査期間中の各施設の赤血球製剤の総輸血袋数は283,636袋,新鮮凍結血症の総輸血袋数は183,591袋,血小板製剤の総輸血袋数は141,538袋であった.細菌感染症2例の診断...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 54; no. 3; pp. 406 - 410
Main Authors 藤井, 康彦, 中田, 浩一, 藤井, 寿一, 浅井, 隆善, 岡崎, 仁, 佐竹, 正博, 羽藤, 高明, 加藤, 栄史, 星, 順隆, 下平, 滋隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2008
日本輸血・細胞治療学会
Subjects
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.54.406

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Summary:背景: 輸血による細菌感染症,輸血関連急性肺障害(TRALI)などは,原因製剤を回収して,必要な検査を実施しなければ副作用の原因を特定できない.しかし,病院内での原因製剤の回収を含む調査体制が確立していないため,これらの副作用が原因不明のままとなっている可能性がある. 方法: 原因製剤の回収を含めた標準的な原因検索方法を作成し,大規模病院50施設において急性輸血副作用の調査を2005年から2006年に実施した. 結果: 調査期間中の各施設の赤血球製剤の総輸血袋数は283,636袋,新鮮凍結血症の総輸血袋数は183,591袋,血小板製剤の総輸血袋数は141,538袋であった.細菌感染症2例の診断が確定され,12例の疑い例が報告された.TRALI,およびpossible TRALIの診断基準にそれぞれ,3例,1例が適合した.Transfusion-associated circulatory overload 1例,先行する急性肺障害が輸血により増悪した5例を認め,他の4例は,呼吸困難を認めたが,胸部X線撮影で異常を認めなかった.重症アレルギー反応15例,非溶血性発熱性輸血副作用1例,その他分類不能2例を認めた.今回検討された副作用の検索方法は,細菌感染症,TRALI,重症アレルギー反応などの急性副作用の特定に有用であり,広く普及することにより,輸血副作用の頻度を正確に把握でき,ヘモビジランスに貢献すると思われる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.54.406