腎移植後のE型肝炎の検討―4症例の経験

「I. はじめに」E型肝炎は, E型肝炎ウイルス (hepatitis E virus : HEV) によって引き起こされる, ブタ等をreservoirとする人獣共通感染症である. 2002年に国内感染のE型肝炎患者の死亡例が報告されて以来, 日本でも注目されるようになり, E型肝炎の報告は急増している. さらに輸血に伴うE型肝炎も報告されている. HEVは不顕性感染に終わることが多く, 発症しても急性肝炎を引き起こし一過性に終わるとされていたため, 慢性肝炎への進行を引き起こすことはこれまで考えられてこなかった. しかし, 免疫抑制療法下の臓器移植患者, 血液疾患患者やヒト免疫不全ウイルス...

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Published in移植 Vol. 52; no. 4-5; pp. 390 - 396
Main Authors 中川, 由紀, 齋藤, 和英, 池田, 正博, 田崎, 正行, 高橋, 公太, 大和田, 洋平, 大城, 幸雄, 大河内, 信弘, 岡本, 宏明, 冨田, 善彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2017
日本移植学会
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Summary:「I. はじめに」E型肝炎は, E型肝炎ウイルス (hepatitis E virus : HEV) によって引き起こされる, ブタ等をreservoirとする人獣共通感染症である. 2002年に国内感染のE型肝炎患者の死亡例が報告されて以来, 日本でも注目されるようになり, E型肝炎の報告は急増している. さらに輸血に伴うE型肝炎も報告されている. HEVは不顕性感染に終わることが多く, 発症しても急性肝炎を引き起こし一過性に終わるとされていたため, 慢性肝炎への進行を引き起こすことはこれまで考えられてこなかった. しかし, 免疫抑制療法下の臓器移植患者, 血液疾患患者やヒト免疫不全ウイルス (human immunodeficiency virus : HIV) 感染患者では慢性化する可能性があり, 厳重な対応が必要である. われわれの施設で経験した, 腎移植後にE型肝炎を発症した4症例のうち, 2症例は通常の急性肝炎として速やかに寛解したが, 2症例は慢性肝炎となり, 治癒していない.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.52.4-5_390