下血を主訴として発症した膵仮性嚢胞結腸瘻の一例

症例は,84歳女性,一過性脳虚血発作で他院入院中に,下血を来たし当院救命センターに紹介され搬送された.前医で施行したCTでは,結腸に瘻孔を形成している膵仮性嚢胞と腹腔内膿瘍を認めた.膵仮性嚢胞結腸瘻の診断で内科に入院となった.入院後再度,下血を来たし,緊急内視鏡検査を行った.出血点は明らかではなかったが,下行結腸に粘膜下腫瘍様の所見が認められ,大腸出血による出血性ショックの診断で外科転科となった.保存的治療を継続して,入院後6日目にCTを再検したところ,脾動脈瘤の形成を認め,同日脾動脈瘤をコイルで塞栓し,その後軽快退院となった. 膵結腸瘻の症例は,本邦報告例として9例しかなく,その中で,脾動脈...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in膵臓 Vol. 28; no. 5; pp. 661 - 665
Main Authors 東, 敬之, 薄場, 修, 長谷川, 繁生, 水谷, 雅臣, 小澤, 孝一郎, 森谷, 敏幸, 神尾, 幸則, 横山, 森良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2013
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.28.661

Cover

More Information
Summary:症例は,84歳女性,一過性脳虚血発作で他院入院中に,下血を来たし当院救命センターに紹介され搬送された.前医で施行したCTでは,結腸に瘻孔を形成している膵仮性嚢胞と腹腔内膿瘍を認めた.膵仮性嚢胞結腸瘻の診断で内科に入院となった.入院後再度,下血を来たし,緊急内視鏡検査を行った.出血点は明らかではなかったが,下行結腸に粘膜下腫瘍様の所見が認められ,大腸出血による出血性ショックの診断で外科転科となった.保存的治療を継続して,入院後6日目にCTを再検したところ,脾動脈瘤の形成を認め,同日脾動脈瘤をコイルで塞栓し,その後軽快退院となった. 膵結腸瘻の症例は,本邦報告例として9例しかなく,その中で,脾動脈からの出血を同時に報告しているのは,本症例を含めて4例であった.また,手術を行うことなく,保存的治療で軽快した症例は,本例が本邦初である.現在でも外来で定期的に観察しているが,脾梗塞,脾膿瘍を生じることなく経過している.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.28.661