術前化学療法後の画像変化を追えた破骨細胞様巨細胞型退形成膵管癌の1例

症例は68歳,男性.健診でCA19-9高値を指摘され当院に紹介となった.造影CT,MRIで膵頭部に乏血性腫瘤を認め,超音波内視鏡下穿刺生検で腺癌と診断した.Gemcitabine+S-1による術前化学療法後の造影CTで,腫瘍は増大し,辺縁濃染と内部低吸収を示す腹側領域と境界不明瞭で乏血性の背側領域を認めた.上腸間膜静脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見では,腹側領域には破骨細胞に類似した巨細胞を認め,破骨細胞様巨細胞型退形成癌と診断した.背側領域には管状腺癌が存在し,両成分の境界に移行部が認められた.化学療法期間に増大した退形成癌成分に出血壊死が出現し,初診時より混在...

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Published in膵臓 Vol. 31; no. 5; pp. 738 - 745
Main Authors 佐野, 周生, 伊藤, 貴明, 坂東, 悦郎, 上坂, 克彦, 山本, 有祐, 絹笠, 祐介, 寺島, 雅典, 岡村, 行泰, 佐々木, 恵子, 松林, 宏行, 蘆田, 良, 杉浦, 禎一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.10.2016
Subjects
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.31.738

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Summary:症例は68歳,男性.健診でCA19-9高値を指摘され当院に紹介となった.造影CT,MRIで膵頭部に乏血性腫瘤を認め,超音波内視鏡下穿刺生検で腺癌と診断した.Gemcitabine+S-1による術前化学療法後の造影CTで,腫瘍は増大し,辺縁濃染と内部低吸収を示す腹側領域と境界不明瞭で乏血性の背側領域を認めた.上腸間膜静脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見では,腹側領域には破骨細胞に類似した巨細胞を認め,破骨細胞様巨細胞型退形成癌と診断した.背側領域には管状腺癌が存在し,両成分の境界に移行部が認められた.化学療法期間に増大した退形成癌成分に出血壊死が出現し,初診時より混在する管状腺癌成分とのコントラストが生じた結果,経過でCT所見が変化したと思われた.退形成癌は豊富な腫瘍内血流と出血壊死を特徴とするが,腫瘍径が小さな時には通常型膵癌に類似した画像所見を示すことがある.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.31.738