熱ストレス応答による炎症の抑制機構

熱ショック応答は,熱ショック因子(heat shock factor,HSF)によって転写のレベルで調節され,蛋白質フォールディングを介助する熱ショック蛋白質(heat shock protein,HSP)の誘導を特徴とし,同時に蛋白質分解を含むさまざまな機能を担う蛋白質の誘導も伴う.したがって,細胞の蛋白質ホメオスタシスの鍵となる因子である.それだけでなく,HSFは,脳,生殖器,感覚器などの個体発生と維持に重要な役割も担っている.我々の研究を含む成果から,HSPの主要な制御因子であるHSF1が免疫・炎症反応の調節に必要であること,その一部はHSF1によるTNFαなどの主要な炎症性遺伝子の抑制...

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Published in山口医学 Vol. 60; no. 5; pp. 167 - 171
Main Author 瀧井, 良祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2011
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ISSN0513-1731
1880-4462
DOI10.2342/ymj.60.167

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Summary:熱ショック応答は,熱ショック因子(heat shock factor,HSF)によって転写のレベルで調節され,蛋白質フォールディングを介助する熱ショック蛋白質(heat shock protein,HSP)の誘導を特徴とし,同時に蛋白質分解を含むさまざまな機能を担う蛋白質の誘導も伴う.したがって,細胞の蛋白質ホメオスタシスの鍵となる因子である.それだけでなく,HSFは,脳,生殖器,感覚器などの個体発生と維持に重要な役割も担っている.我々の研究を含む成果から,HSPの主要な制御因子であるHSF1が免疫・炎症反応の調節に必要であること,その一部はHSF1によるTNFαなどの主要な炎症性遺伝子の抑制によるものであることがわかった.さらに,我々は,温熱ストレスによって活性化したHSF1が転写因子ATF3を発現誘導し,それらが発熱性因子であるIL-6を含む多くの炎症性遺伝子の発現を直接及び間接的に抑制すること,そしてその経路のマウス個体での重要性を明らかにした.生理的な発熱反応が,過剰な炎症反応を抑制する分子機構について議論する.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.60.167