胆嚢壁内嚢胞性病変の1例

症例は58歳,男性.近医で高血圧と糖尿病を治療されていたが,右季肋部痛の精査目的に当院に紹介された.来院時の血液生化学的検査所見では白血球増多と血清トランスアミナーゼの軽度の上昇を認めた.腹部USおよび腹部造影CTでは胆嚢内に複数の小結石を認め,胆嚢体部肝床側に径約1cmの嚢胞性病変の集簇を認めた.MRIでは胆嚢内容と嚢胞性病変内容の相違が示唆された.悪性所見を認めなかったため腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理組織所見では嚢胞性病変は線維組織で裏打ちされ,嚢胞内面を覆う上皮は認めなかった.また嚢胞性病変周囲にRokitansky-Aschoff sinus(以下RASと略)の破綻を示唆する所見...

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Published in胆道 Vol. 34; no. 2; pp. 181 - 187
Main Authors 木村, 俊久, 飯田, 敦, 佐藤, 保則, 五井, 孝憲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 31.05.2020
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Summary:症例は58歳,男性.近医で高血圧と糖尿病を治療されていたが,右季肋部痛の精査目的に当院に紹介された.来院時の血液生化学的検査所見では白血球増多と血清トランスアミナーゼの軽度の上昇を認めた.腹部USおよび腹部造影CTでは胆嚢内に複数の小結石を認め,胆嚢体部肝床側に径約1cmの嚢胞性病変の集簇を認めた.MRIでは胆嚢内容と嚢胞性病変内容の相違が示唆された.悪性所見を認めなかったため腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理組織所見では嚢胞性病変は線維組織で裏打ちされ,嚢胞内面を覆う上皮は認めなかった.また嚢胞性病変周囲にRokitansky-Aschoff sinus(以下RASと略)の破綻を示唆する所見を認めたことから嚢胞性病変はRASから形成されたと推測された.胆嚢壁内に形成される嚢胞性病変は稀であり症例の蓄積と検討が望まれる.
ISSN:0914-0077
1883-6879
DOI:10.11210/tando.34.181