ヒアルロン酸をターゲットにした膵癌治療の最前線

細胞外マトリックスの中心的コンポーネントであるヒアルロン酸は多くの癌で重要な役割を果たしている.大部分の膵癌はデスモプラジアと呼ばれる豊富な線維性間質を有し,ヒアルロン酸の著明な蓄積を伴っている.したがって,ヒアルロン酸は膵癌の治療標的として注目されている.これまでにヒアルロン酸を標的にした膵癌の治療戦略として,①ヒアルロン酸産生の阻害,②ヒアルロン酸シグナル伝達経路の阻害,および③間質のヒアルロン酸除去といったアプローチ法が報告されている.中でも,ヒアルロン酸を分解する酵素製剤であるPEGPH20は,ゲムシタビンをはじめとした化学療法の効果を高めることが証明され,米国での臨床試験においても有...

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Published in膵臓 Vol. 31; no. 2; pp. 128 - 134
Main Author 佐藤, 典宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.04.2016
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Summary:細胞外マトリックスの中心的コンポーネントであるヒアルロン酸は多くの癌で重要な役割を果たしている.大部分の膵癌はデスモプラジアと呼ばれる豊富な線維性間質を有し,ヒアルロン酸の著明な蓄積を伴っている.したがって,ヒアルロン酸は膵癌の治療標的として注目されている.これまでにヒアルロン酸を標的にした膵癌の治療戦略として,①ヒアルロン酸産生の阻害,②ヒアルロン酸シグナル伝達経路の阻害,および③間質のヒアルロン酸除去といったアプローチ法が報告されている.中でも,ヒアルロン酸を分解する酵素製剤であるPEGPH20は,ゲムシタビンをはじめとした化学療法の効果を高めることが証明され,米国での臨床試験においても有望な結果が報告されつつある.本論文では膵癌の進展におけるヒアルロン酸の役割に関する最新の知見およびヒアルロン酸をターゲットにした治療戦略について概説する.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.31.128