冠動脈病変に対するレーザー血管形成術の現況

冠動脈疾患の治療法であるバルーンによる冠動脈インターベンション(PCI)は,高度石灰化病変,血栓病変,完全慢性閉塞病変などの複雑病変に対する初期成功率が低いことと慢性期の再発率が高いことが問題であった.その問題を克服するために様々なデバイスが開発されたが,エキシマレーザーは動脈硬化巣の削除効果を有するdebulking deviceのひとつである. 多くの新しいデバイスが開発された現状でも,PCIが困難な病変として,第一に急性心筋梗塞,不安定狭心症や変性静脈グラフトのように病変部に豊富な血栓や,やわらかな粥腫や動脈硬化巣を有する病変がある.これらは,バルーンやステントによる血管形成術時に病変部...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 31; no. 1; pp. 24 - 28
Main Author 南都, 伸介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 15.04.2010
日本レーザー医学会
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Summary:冠動脈疾患の治療法であるバルーンによる冠動脈インターベンション(PCI)は,高度石灰化病変,血栓病変,完全慢性閉塞病変などの複雑病変に対する初期成功率が低いことと慢性期の再発率が高いことが問題であった.その問題を克服するために様々なデバイスが開発されたが,エキシマレーザーは動脈硬化巣の削除効果を有するdebulking deviceのひとつである. 多くの新しいデバイスが開発された現状でも,PCIが困難な病変として,第一に急性心筋梗塞,不安定狭心症や変性静脈グラフトのように病変部に豊富な血栓や,やわらかな粥腫や動脈硬化巣を有する病変がある.これらは,バルーンやステントによる血管形成術時に病変部に存在する血栓や粥腫を末梢に飛散させ末梢塞栓を惹起させる可能性が大きい.また,飛散する成分の量が多いため末梢塞栓による心筋障害が問題となる.第二に再狭窄病変があげられる.薬剤溶出性ステントの登場により血管形成術後の再狭窄は激減したものの,再狭窄を呈する症例は依然として存在し,再狭窄後の確立した治療法は存在しない.そのほか,バルーンでは開大できないような硬い石灰化病変,処理の難しいび慢性病変,デバイスの通過が困難な完全閉塞病変などがあげられる. われわれは,急性心筋梗塞ならびにステント再狭窄に焦点をあてて検討を行った.急性心筋梗塞に対しては,阪神間の3施設の共同研究としてLAMI trailを行った.その結果では,CARMELと同様に,procedure success は97.8%,final TIMI3獲得率は96.9%とよい成績であった.%MLDはpost laserで56.5%とCARMELと同様であるものの,finalでは5.0%と素晴らしい成績を得た.また,再狭窄に最も効果のある薬剤溶出性ステントとレーザーの効果をステント再狭窄28例において比較した.レーザー治療7例,DES治療21例において,治療成績ならびに治療費比較したところ,レーザーは,MACE(死亡,心筋梗塞,再治療率)はDESとほぼ同等であり,治療に要した費用は有意に低値であり,今後はステント再狭窄例に対する新しい治療法として期待される.
ISSN:0288-6200
1881-1639
DOI:10.2530/jslsm.31.24