がん疼痛患者におけるトラマドールの使用実態調査とその有用性の検討

「緒言」がん疼痛や慢性疼痛の治療薬であるトラマドール塩酸塩(トラマール(R)カプセル(日本新薬(株), 京都))は, 世界保健機構(World Health Organization: WHO)の三段階除痛ラダーの第二段階に分類される弱オピオイド鎮痛薬(弱オピオイド)である. トラマドールは, 麻薬に指定されているモルヒネやオキシコドンなどの強オピオイド鎮痛薬(強オピオイド)と同様, オピオイドμ受容体に結合し, 上行伝導路を抑制する作用を有するが, 麻薬指定を受けていない. オピオイドμ受容体作動作用に加えて, 神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用も有する...

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Published in医療薬学 Vol. 42; no. 2; pp. 69 - 77
Main Authors 山田, 清文, 太田, 美里, 野田, 幸裕, 宮崎, 雅之, 小嶋, 仲夫, 岡本, 誉士典, 肥田, 裕丈, 松岡, 史華, 長谷川, 章, 加藤, 博史, 椿井, 朋, 後藤, 綾, 竹内, 美緒, 毛利, 彰宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本医療薬学会 10.02.2016
日本医療薬学会
Subjects
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ISSN1346-342X
1882-1499
DOI10.5649/jjphcs.42.69

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Summary:「緒言」がん疼痛や慢性疼痛の治療薬であるトラマドール塩酸塩(トラマール(R)カプセル(日本新薬(株), 京都))は, 世界保健機構(World Health Organization: WHO)の三段階除痛ラダーの第二段階に分類される弱オピオイド鎮痛薬(弱オピオイド)である. トラマドールは, 麻薬に指定されているモルヒネやオキシコドンなどの強オピオイド鎮痛薬(強オピオイド)と同様, オピオイドμ受容体に結合し, 上行伝導路を抑制する作用を有するが, 麻薬指定を受けていない. オピオイドμ受容体作動作用に加えて, 神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用も有する. このようにトラマドールは, 2つの作用機序を有する鎮痛薬であり, 強オピオイドで除痛できなかった患者に対してトラマドールが有効であった報告は多数ある. がん疼痛の治療における三段階の除痛ラダーでは, 痛みの強さに応じて各段階で使用される鎮痛薬が決められている. すなわち, 軽度の痛みに対しては第一段階(非オピオイド鎮痛薬:非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug: NSAID)やアセトアミノフェンなど)の鎮痛薬を使用し, 痛みが強くなるに従って第二, 第三段階へ移行していく.
ISSN:1346-342X
1882-1499
DOI:10.5649/jjphcs.42.69