HLA抗体保有患者の生体肝移植症例
肝移植において患者がHLA抗体を保有する場合,移植片の液性拒絶の原因となり,特にリンパ球クロスマッチ(DCT)陽性では注意を要する.今回HLA抗体保有の50歳代女性でABO不適合かつDCT陽性の生体肝移植を経験したので報告する.非代償性肝硬変症と診断され,移植目的にて当院外科へ入院、生体肝移植術が実施された.ABO不適合移植で抗B抗体価を下げるため移植前に3回の血漿交換療法とリツキサンによる免疫抑制療法が実施された.移植当日と術後4週目以降の血小板減少に対しPC-HLA輸血が有効であったが,T-Bilの段階的な上昇が見られ,8週目の血小板減少ではPC-HLA輸血の効果は得られず,その後肝不全が...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 55; no. 6; pp. 711 - 716 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
2009
日本輸血・細胞治療学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1881-3011 1883-0625 |
DOI | 10.3925/jjtc.55.711 |
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Summary: | 肝移植において患者がHLA抗体を保有する場合,移植片の液性拒絶の原因となり,特にリンパ球クロスマッチ(DCT)陽性では注意を要する.今回HLA抗体保有の50歳代女性でABO不適合かつDCT陽性の生体肝移植を経験したので報告する.非代償性肝硬変症と診断され,移植目的にて当院外科へ入院、生体肝移植術が実施された.ABO不適合移植で抗B抗体価を下げるため移植前に3回の血漿交換療法とリツキサンによる免疫抑制療法が実施された.移植当日と術後4週目以降の血小板減少に対しPC-HLA輸血が有効であったが,T-Bilの段階的な上昇が見られ,8週目の血小板減少ではPC-HLA輸血の効果は得られず,その後肝不全が原因で敗血症となり死亡退院となった.本例はABO不適合かつHLA抗体保有移植で,より強い免疫抑制療法の実施が強い拒絶を認めなかった要因の1つと考えられた.術後8週目以降の血小板輸血不応では,血栓性微小血管障害症(TMA)が疑われ、後に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診断がされたことから,輸血の適応と血小板減少などの原因について早期に究明し対応する必要があると思われた. |
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ISSN: | 1881-3011 1883-0625 |
DOI: | 10.3925/jjtc.55.711 |