外傷性尿崩症治癒後,妊娠中に中枢性尿崩症が顕在化した1例

【症例】35歳,初産婦.17歳時に頭部外傷後の中枢性尿崩症に対し,1カ月間のデスモプレシン酢酸塩水和物(dDAVP)投与にて寛解した既往がある.34歳で自然妊娠後,妊娠26週で妊娠糖尿病と診断.同時期から口渇と多飲多尿を認め,妊娠30週頃に悪化し妊娠35週に紹介となった.症状およびバソプレシン(AVP),尿浸透圧の低下より,妊娠36週よりdDAVP点鼻薬を開始したところ,速やかに尿量の減少と尿浸透圧上昇を認め,中枢性尿崩症と診断した.児の発育は週数相当であったが,一時的に羊水過少傾向を認めた.妊娠39週4日で経腟分娩.新生児に明らかな異常所見は認めず.産後はdDAVPを漸減し終了したが症状は再...

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Published in日本周産期・新生児医学会雑誌 Vol. 58; no. 1; pp. 147 - 151
Main Authors 森重, 健一郎, 志賀, 友美, 青島, 友維
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本周産期・新生児医学会 2022
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ISSN1348-964X
2435-4996
DOI10.34456/jjspnm.58.1_147

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Summary:【症例】35歳,初産婦.17歳時に頭部外傷後の中枢性尿崩症に対し,1カ月間のデスモプレシン酢酸塩水和物(dDAVP)投与にて寛解した既往がある.34歳で自然妊娠後,妊娠26週で妊娠糖尿病と診断.同時期から口渇と多飲多尿を認め,妊娠30週頃に悪化し妊娠35週に紹介となった.症状およびバソプレシン(AVP),尿浸透圧の低下より,妊娠36週よりdDAVP点鼻薬を開始したところ,速やかに尿量の減少と尿浸透圧上昇を認め,中枢性尿崩症と診断した.児の発育は週数相当であったが,一時的に羊水過少傾向を認めた.妊娠39週4日で経腟分娩.新生児に明らかな異常所見は認めず.産後はdDAVPを漸減し終了したが症状は再燃しなかった. 【考察】本症例では過去の外傷による潜在的なAVP分泌低下あるいは妊娠中の分泌増加不全によって相対的なAVPの不足が生じ,中枢性尿崩症が顕在化したと考えられた.
ISSN:1348-964X
2435-4996
DOI:10.34456/jjspnm.58.1_147