腰部リンパ管奇形が出生前に増大し,嚢胞内出血から慢性貧血に至った一例
胎児リンパ管奇形は,全身のリンパ組織に生じる良性の先天的形成異常である.胎内で稀な発生部位である腰部リンパ管奇形が徐々に増大し,嚢胞内出血により慢性貧血に至った一例を経験したので報告する.症例は27歳初産婦.妊娠28週に初めて胎児の腰部腫瘤を指摘され,受診となった.超音波検査所見および骨盤MRI所見より,リンパ管奇形を疑った.腫瘤は徐々に増大し,妊娠38週6日に選択的帝王切開術を施行した.出生直後の採血にてHb8.0g/dLと腰部腫瘤内への出血に伴う貧血を認め,輸血を行った.出生後も腫瘤は増大し,腫瘤切除術を施行し,リンパ管奇形の診断に至った.胎児期に嚢胞の増大を認めるリンパ管奇形は,貧血や出...
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Published in | 日本周産期・新生児医学会雑誌 Vol. 58; no. 2; pp. 300 - 305 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
2022
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Subjects | |
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ISSN | 1348-964X 2435-4996 |
DOI | 10.34456/jjspnm.58.2_300 |
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Summary: | 胎児リンパ管奇形は,全身のリンパ組織に生じる良性の先天的形成異常である.胎内で稀な発生部位である腰部リンパ管奇形が徐々に増大し,嚢胞内出血により慢性貧血に至った一例を経験したので報告する.症例は27歳初産婦.妊娠28週に初めて胎児の腰部腫瘤を指摘され,受診となった.超音波検査所見および骨盤MRI所見より,リンパ管奇形を疑った.腫瘤は徐々に増大し,妊娠38週6日に選択的帝王切開術を施行した.出生直後の採血にてHb8.0g/dLと腰部腫瘤内への出血に伴う貧血を認め,輸血を行った.出生後も腫瘤は増大し,腫瘤切除術を施行し,リンパ管奇形の診断に至った.胎児期に嚢胞の増大を認めるリンパ管奇形は,貧血や出生後の感染の可能性を考慮し,超音波検査やMRIにより嚢胞内出血の有無や貧血の進行を経時的に評価しながら,娩出時期や娩出方法を慎重に検討する必要がある. |
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ISSN: | 1348-964X 2435-4996 |
DOI: | 10.34456/jjspnm.58.2_300 |