頭頸部がんの終末期における緩和医療について
根治不能となった場合の姑息的薬物療法の適応は, 患者本人の価値観が重要となるので, 本人の意向を聴取するにはおよその予後を予測して伝える必要がある. 有効な薬剤がなくなった場合は積極的がん治療の終了時期を検討する. 医療者は患者力の向上を図ることにも責務がある. 終末期では医学的な最善ではなく患者自身にとっての最善を目指すべきで, 対話を通して患者の「物語」を紡ぎ出し全人的な診療を行う. 嚥下障害に関しては経腸栄養剤や胃瘻, 上気道閉塞には気管切開, 腫瘍出血には局所の止血剤を使用する. 消化管機能や意識レベルの低下を認めた場合では, 過剰な補液は推奨されない. 終末期はせん妄の発生率も高い....
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Published in | Nippon Jibiinkoka Tokeibugeka Gakkai Kaiho(Tokyo) Vol. 126; no. 11; pp. 1191 - 1194 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.11.2023
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery |
Subjects | |
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ISSN | 2436-5793 2436-5866 |
DOI | 10.3950/jibiinkotokeibu.126.11_1191 |
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Summary: | 根治不能となった場合の姑息的薬物療法の適応は, 患者本人の価値観が重要となるので, 本人の意向を聴取するにはおよその予後を予測して伝える必要がある. 有効な薬剤がなくなった場合は積極的がん治療の終了時期を検討する. 医療者は患者力の向上を図ることにも責務がある. 終末期では医学的な最善ではなく患者自身にとっての最善を目指すべきで, 対話を通して患者の「物語」を紡ぎ出し全人的な診療を行う. 嚥下障害に関しては経腸栄養剤や胃瘻, 上気道閉塞には気管切開, 腫瘍出血には局所の止血剤を使用する. 消化管機能や意識レベルの低下を認めた場合では, 過剰な補液は推奨されない. 終末期はせん妄の発生率も高い. 身体的苦痛以外に, 精神的苦痛, 社会的苦痛, スピリチュアル・ペインがあり, これらの問題は専門チームへの相談が必要な場合が多い. 制御困難な苦痛に対する鎮静の必要性は必ず多職種チームで検討する. 適切に行われれば生命予後を短縮しない. 近年在宅での看取りが特に都市部で増加している. 在宅も余命短縮させるとは言えない. 頭頸部では気管カニューレや腫瘍出血などから在宅管理が困難とも考えられがちだが, 頭頸部外科医と訪問看護師や訪問医の間で密な連絡を行い, 時には頭頸部外科医が直接訪問することで, 最期まで不安なく在宅管理が可能になると思われる. 終末期の患者の真の状態を知ることは, 頭頸部外科医がそれ以前の治療方針を決定する上でも有用と考える. |
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ISSN: | 2436-5793 2436-5866 |
DOI: | 10.3950/jibiinkotokeibu.126.11_1191 |