リン脂質に対する免疫応答を介した歯周炎と心臓血管疾患の関係

「1. 歯周炎と心臓血管疾患との関わり」 歯周炎と心臓血管疾患との関わりについては既に数多くの報告がなされており, その多くは歯周炎が心臓血管疾患のリスク因子であることを示唆している. しかしながら歯周炎が心臓血管疾患に与える分子機構は十分に明らかとなっていない. 歯周炎が心臓血管疾患に与える影響としては, 大動脈瘤などの血管病変から歯周病原細菌が検出されたことから, 歯周病原細菌が菌血症によって全身に運ばれて血管への感染などを引き起こす直接作用が考えられる. しかし動脈硬化を有する歯周炎患者では血清中の炎症性サイトカイン濃度が高かったことや, P.gingivalisの熱ショック蛋白が宿主の...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 58; no. 3; pp. 98 - 106
Main Authors 加藤, 幸紀, 白井, 要, 古市, 保志, 長澤, 敏行, 河野, 舞, 森, 真理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 2016
日本歯周病学会
Subjects
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.58.98

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Summary:「1. 歯周炎と心臓血管疾患との関わり」 歯周炎と心臓血管疾患との関わりについては既に数多くの報告がなされており, その多くは歯周炎が心臓血管疾患のリスク因子であることを示唆している. しかしながら歯周炎が心臓血管疾患に与える分子機構は十分に明らかとなっていない. 歯周炎が心臓血管疾患に与える影響としては, 大動脈瘤などの血管病変から歯周病原細菌が検出されたことから, 歯周病原細菌が菌血症によって全身に運ばれて血管への感染などを引き起こす直接作用が考えられる. しかし動脈硬化を有する歯周炎患者では血清中の炎症性サイトカイン濃度が高かったことや, P.gingivalisの熱ショック蛋白が宿主の熱ショック蛋白と相同性を持つために, 宿主と細菌の両方に反応する自己反応性のT細胞が動脈硬化病変部に浸潤していたことなどから, 歯周病原細菌に対する免疫反応が心臓血管疾患を引き起こす間接作用にも注目が集まっている.
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.58.98