術前の鑑別診断に苦慮したTS1膵腺房細胞癌の1例
症例は55歳,男性.人間ドックのUSで膵体部に2cm大の腫瘤を指摘されて受診した.造影CTでは,腫瘤は動脈相では膵実質よりも低吸収を示したが,膵実質相で膵実質よりも淡く造影され,平衡相まで造影効果が持続していた.EUSでは境界明瞭,辺縁整,内部均一な類円形の低エコー腫瘤として描出された.EUS-FNAを施行し,細胞診では腺房細胞癌あるいは神経内分泌腫瘍,組織診では退形成癌と診断され,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘤は線維性被膜に覆われた16mm大の充実性腫瘤で,病理組織学的に腫瘍細胞は腺房様構造,腺管構造を形成していた.免疫染色にてlipase,trypsin,BCL10陽性であり...
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Published in | 膵臓 Vol. 33; no. 1; pp. 71 - 79 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本膵臓学会
25.02.2018
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Subjects | |
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ISSN | 0913-0071 1881-2805 |
DOI | 10.2958/suizo.33.71 |
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Summary: | 症例は55歳,男性.人間ドックのUSで膵体部に2cm大の腫瘤を指摘されて受診した.造影CTでは,腫瘤は動脈相では膵実質よりも低吸収を示したが,膵実質相で膵実質よりも淡く造影され,平衡相まで造影効果が持続していた.EUSでは境界明瞭,辺縁整,内部均一な類円形の低エコー腫瘤として描出された.EUS-FNAを施行し,細胞診では腺房細胞癌あるいは神経内分泌腫瘍,組織診では退形成癌と診断され,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘤は線維性被膜に覆われた16mm大の充実性腫瘤で,病理組織学的に腫瘍細胞は腺房様構造,腺管構造を形成していた.免疫染色にてlipase,trypsin,BCL10陽性であり,腺房細胞癌と診断した.膵腺房細胞癌がTS1の状態で発見されることは稀であるが,膨張性発育を示し,造影CTにて通常型膵癌よりも造影効果を示す充実性腫瘍を見た場合には,腺房細胞癌を考慮する必要がある. |
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ISSN: | 0913-0071 1881-2805 |
DOI: | 10.2958/suizo.33.71 |