抗凝固剤内服中に発症した後天性血友病Aにおける診断の問題点
凝固因子に対するインヒビター出現に起因する後天性血友病では,診断の遅れが出血症状を重篤にし,結果として必要以上の輸血が行われる可能性がある.今回,我々は抗凝固剤内服中に後天性血友病Aを発症し,紹介受診にいたるまで一定の期間を要した一例を経験した.症例は66歳男性.近医内科で,心房細動に対して10年来ワルファリン,3年前からリバーロキサバンでプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)は1.4~2.4に維持されていた.作業中の筋肉内・皮下出血を繰り返すため,2016年3月にアピキサバン,同年4月に再度ワルファリンへ変更されたが出血傾向が持続するため当院紹介となった.ワルファリン休薬後も出血傾向と...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 64; no. 3; pp. 540 - 544 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
30.06.2018
日本輸血・細胞治療学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1881-3011 1883-0625 |
DOI | 10.3925/jjtc.64.540 |
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Summary: | 凝固因子に対するインヒビター出現に起因する後天性血友病では,診断の遅れが出血症状を重篤にし,結果として必要以上の輸血が行われる可能性がある.今回,我々は抗凝固剤内服中に後天性血友病Aを発症し,紹介受診にいたるまで一定の期間を要した一例を経験した.症例は66歳男性.近医内科で,心房細動に対して10年来ワルファリン,3年前からリバーロキサバンでプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)は1.4~2.4に維持されていた.作業中の筋肉内・皮下出血を繰り返すため,2016年3月にアピキサバン,同年4月に再度ワルファリンへ変更されたが出血傾向が持続するため当院紹介となった.ワルファリン休薬後も出血傾向と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)延長を認め,血液内科紹介時には血腫増大とともにプレショック状態を呈した.入院時には凝固第VIII因子著減とミキシングテストにより後天性血友病Aの診断に至り,赤血球液輸血とともに免疫抑制療法およびバイパス療法にて軽快を得た.高齢化社会を迎えて抗凝固療法の必要性が高まる中,後天性血友病を発症した際には凝固検査修飾に伴う診断の遅れに注意が必要である. |
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ISSN: | 1881-3011 1883-0625 |
DOI: | 10.3925/jjtc.64.540 |