梗塞後左室リモデリングにおけるアンジオテンシン変換酵素遺伝子多型性の役割

急性心筋梗塞では, 冠血流の突然の遮断により, 梗塞に陥った部分の心筋細胞が壊死, 脱落し, コラーゲン線維などの線維組織に置換される1, 2. この梗塞部位は収縮力を欠き, 心収縮に伴い上昇する心内圧に耐えきれず, 壁が伸展し菲薄化する3-5. 一方, 非梗塞部の心筋は, 低下した心機能を代償するため, 心筋細胞が肥大し, 間質(細胞外マトリックス)が増加する即. この代償機構が過剰に反応すると, 非梗塞部の心筋の収縮力が低下し, 心機能がさらに悪化し, 心内腔が拡大する5, 8. この一連の過程が左室リモデリングと呼ばれるものであるが, 梗塞巣が小さい場合には, 左室拡大は出現しない. し...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 67; no. 2; pp. 96 - 104
Main Authors 富田, 喜文, 岸田, 浩, 何, 媛, 草間, 芳樹, 宗像, 一雄, 高野, 照夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2000
Online AccessGet full text
ISSN1345-4676
1347-3409
DOI10.1272/jnms.67.96

Cover

More Information
Summary:急性心筋梗塞では, 冠血流の突然の遮断により, 梗塞に陥った部分の心筋細胞が壊死, 脱落し, コラーゲン線維などの線維組織に置換される1, 2. この梗塞部位は収縮力を欠き, 心収縮に伴い上昇する心内圧に耐えきれず, 壁が伸展し菲薄化する3-5. 一方, 非梗塞部の心筋は, 低下した心機能を代償するため, 心筋細胞が肥大し, 間質(細胞外マトリックス)が増加する即. この代償機構が過剰に反応すると, 非梗塞部の心筋の収縮力が低下し, 心機能がさらに悪化し, 心内腔が拡大する5, 8. この一連の過程が左室リモデリングと呼ばれるものであるが, 梗塞巣が小さい場合には, 左室拡大は出現しない. したがって, 梗塞巣を縮小させる治療法が梗塞後の左室リモデリング予防に重要である9, 10. 一方, 左室リモデリング過程における神経体液性因子の役割の重要性11, 特にrenin-angiotensin系の重要性が指摘されている12-14. 梗塞後の左室リモデリングおよび心不全発生, しいては生命予後の延長が, アンジオテンシン変換酵素阻害薬使用により改善されることが示されている15-18. また, 再灌流療法後の冠血流回復には, 血管内皮細胞より放出されるNOの重要性も指摘されている19. さらに, angiotensin II type 1 receptor遺伝子多型性と左室心筋量との関係も指摘されている20.
ISSN:1345-4676
1347-3409
DOI:10.1272/jnms.67.96