血小板輸血中に発症したたこつぼ型心筋症

症例は85歳,男性.非ホジキンリンパ腫の化学療法後の血小板減少症に対して血小板輸血を行ったところ,輸血開始20分後に喘鳴と呼吸困難が出現した.心エコーでEF 27.3%と高度の心機能低下を認め,心基部の壁運動は正常に保たれているものの心尖部の壁運動が高度に低下していたことから,たこつぼ型心筋症と診断した.利尿薬等で加療を行い,症状は改善し,心エコー所見も正常化した.たこつぼ型心筋症は交感神経を介する何らかのストレスを誘因とし,突然,一過性の心機能障害を呈する病態である.本症例は血小板輸血後のアレルギー反応がストレスとなって,たこつぼ型心筋症を起こし,心不全症状が出現したのではないかと考えられた...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 66; no. 3; pp. 553 - 558
Main Authors 山之内, 純, 川野, 広大, 秋田, 誠, 岡本, 康二, 土居, 靖和, 竹中, 克斗, 羽藤, 高明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 25.06.2020
日本輸血・細胞治療学会
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Summary:症例は85歳,男性.非ホジキンリンパ腫の化学療法後の血小板減少症に対して血小板輸血を行ったところ,輸血開始20分後に喘鳴と呼吸困難が出現した.心エコーでEF 27.3%と高度の心機能低下を認め,心基部の壁運動は正常に保たれているものの心尖部の壁運動が高度に低下していたことから,たこつぼ型心筋症と診断した.利尿薬等で加療を行い,症状は改善し,心エコー所見も正常化した.たこつぼ型心筋症は交感神経を介する何らかのストレスを誘因とし,突然,一過性の心機能障害を呈する病態である.本症例は血小板輸血後のアレルギー反応がストレスとなって,たこつぼ型心筋症を起こし,心不全症状が出現したのではないかと考えられた.輸血後に心不全を呈する疾患としてTACO(輸血関連循環負荷)が知られているが,本例はTACOの診断基準も満たしていた.TACOと診断されている症例の中にたこつぼ型心筋症の症例も含まれている可能性があり,またTACOの病態にたこつぼ型心筋症が関与している可能性も考えられ,多数例での解析が輸血後心不全の病態の解明に必要と思われる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.66.553