Prrx1を標的とした膵癌の個別化分子治療への応用

膵癌克服には,高い浸潤転移能を有するその生物学的特徴を解明し,臨床応用することが肝要である.膵臓の発生・再生・早期癌化で共通する新規癌関連因子として同定されたPrrx1の2つのisoform(Prrx1a,Prrx1b)の膵癌進展形式への関与,さらにisoformをtargetとした新規分子標的治療の可能性を模索した.Prrx1b発現は原発巣細胞で最も高く,切除標本では癌浸潤の先進部や間葉系細胞の核に強く発現しており,過剰発現細胞では間葉系細胞へと変化し高い浸潤能を獲得した.一方,Prrx1a発現は肝転移巣細胞に強く発現し,原発巣では主に上皮性管状腺管細胞に発現していた.EMTを誘導するPrr...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in膵臓 Vol. 31; no. 1; pp. 41 - 47
Main Authors 宮崎, 勝, 西田, 孝宏, 高野, 重紹, 吉富, 秀幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.02.2016
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.31.41

Cover

More Information
Summary:膵癌克服には,高い浸潤転移能を有するその生物学的特徴を解明し,臨床応用することが肝要である.膵臓の発生・再生・早期癌化で共通する新規癌関連因子として同定されたPrrx1の2つのisoform(Prrx1a,Prrx1b)の膵癌進展形式への関与,さらにisoformをtargetとした新規分子標的治療の可能性を模索した.Prrx1b発現は原発巣細胞で最も高く,切除標本では癌浸潤の先進部や間葉系細胞の核に強く発現しており,過剰発現細胞では間葉系細胞へと変化し高い浸潤能を獲得した.一方,Prrx1a発現は肝転移巣細胞に強く発現し,原発巣では主に上皮性管状腺管細胞に発現していた.EMTを誘導するPrrx1b下流因子であるHgfを中和抗体ficlatuzumabで阻害するとin vitroで浸潤を抑制,in vivoではgemcitabineとのcombinationにより肝転移数を減少させた.Prrx1 isoformは膵癌浸潤転移メカニズムに関与し,有望な分子標的治療薬となり得ると思われた.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.31.41