産科大量出血に対するクリオプレシピテートの有用性

分娩時大量出血が生じた際に希釈性凝固障害,あるいは播種性血管内凝固症候群の併発が止血を困難にしている場合が少なくない.また,分娩時出血は外科的縫合だけでは止血できない特殊性もある.このような状況では血液凝固因子を速やかに止血可能域の濃度に上昇させて止血を図ることが最も重要である.そのためには新鮮凍結血漿だけでは不充分であり,凝固因子の濃縮製剤であるクリオプレシピテートを使用して急速に凝固因子を補充することが必要である.当院産科において分娩時に大量出血を生じた14症例(平均出血量5,005.6ml)に対してクリオプレシピテートを投与したところ,全例でフィブリノゲン値の速やかな上昇を認め,止血を得...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 58; no. 3; pp. 486 - 491
Main Authors 岩尾, 憲明, 深澤, 宏子, 大森, 真紀子, 星, 和彦, 樋口, 浩二, 小笠原, 英理子, 伏見, 美津恵, 須波, 玲, 平田, 修司, 小室, 真祐子, 中嶋, ゆう子, 奥田, 靖彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2012
日本輸血・細胞治療学会
Subjects
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.58.486

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Summary:分娩時大量出血が生じた際に希釈性凝固障害,あるいは播種性血管内凝固症候群の併発が止血を困難にしている場合が少なくない.また,分娩時出血は外科的縫合だけでは止血できない特殊性もある.このような状況では血液凝固因子を速やかに止血可能域の濃度に上昇させて止血を図ることが最も重要である.そのためには新鮮凍結血漿だけでは不充分であり,凝固因子の濃縮製剤であるクリオプレシピテートを使用して急速に凝固因子を補充することが必要である.当院産科において分娩時に大量出血を生じた14症例(平均出血量5,005.6ml)に対してクリオプレシピテートを投与したところ,全例でフィブリノゲン値の速やかな上昇を認め,止血を得ることができた.大量出血による希釈性凝固障害で高度の低フィブリノゲン血症を生じた産科危機的出血に対してはクリオプレシピテートを併用した輸血療法が極めて有用であると考えられる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.58.486