甲状腺腫瘍における境界悪性病変:その背景と問題点

「はじめに」癌腫をはじめとする腫瘍病変は, 通常その病理組織像から良性, 悪性に大きく分類される. しかし, どの臓器においても良悪の判定が困難な症例が一定数存在する. これらに対処するため, 各臓器では境界悪性という概念がある. 例えば, 卵巣の粘液性腫瘍や漿液性腫瘍といった上皮性腫瘍には, 以前から境界悪性(borderline malignancy)という疾患カテゴリーが確立しており, その診断基準, 臨床的な取り扱いについては日本の癌取り扱い規約に明記されている. 甲状腺腫瘍においては長らく, この境界悪性という概念が存在しなかったが, 2017年出版のWHO分類第4版から, 新たに濾...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 16; no. 1; pp. 31 - 32
Main Author 大橋, 隆治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.02.2020
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Summary:「はじめに」癌腫をはじめとする腫瘍病変は, 通常その病理組織像から良性, 悪性に大きく分類される. しかし, どの臓器においても良悪の判定が困難な症例が一定数存在する. これらに対処するため, 各臓器では境界悪性という概念がある. 例えば, 卵巣の粘液性腫瘍や漿液性腫瘍といった上皮性腫瘍には, 以前から境界悪性(borderline malignancy)という疾患カテゴリーが確立しており, その診断基準, 臨床的な取り扱いについては日本の癌取り扱い規約に明記されている. 甲状腺腫瘍においては長らく, この境界悪性という概念が存在しなかったが, 2017年出版のWHO分類第4版から, 新たに濾胞性腫瘍の一つとして境界悪性病変(前駆腫瘍)が正式に採用された. しかし, この新たな疾患概念を本邦に正式導入するにあたり, 甲状腺腫瘍の専門家から様々な問題点が指摘されている. 本稿では, 甲状腺境界悪性病変登場の背景, 問題点, これからの課題について概説する.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.16.31