詳細な前庭機能解析を行った内耳奇形の1例

「はじめに」内耳奇形は, 内耳発生の停止により内耳形態に異常を生じる比較的稀な疾患である. 先天性難聴の精査を契機に診断されることが最も多いと考えられており, 先天性難聴の約20%を内耳奇形が占めると報告されている. 先天性難聴は患児に言語発達の遅延をもたらす可能性があるので, 早期診断および補聴器, 蝸牛形態に応じた人工内耳手術などの早期介入が重要である. そのため, 内耳奇形の研究は, 蝸牛奇形を中心に進められてきた. 一方, 内耳奇形による前庭機能障害は, 幼少期に粗大運動, 平衡感覚の発達の遅延をもたらす可能性があるものの, その後は前庭代償が働くことで就学前に運動発達は正常化するとさ...

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Published inEquilibrium Research Vol. 80; no. 2; pp. 112 - 119
Main Authors 新藤, 晋, 池園, 哲郎, 大澤, 威一郎, 堤, 剛, 松﨑, 理樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本めまい平衡医学会 30.04.2021
日本めまい平衡医学会
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ISSN0385-5716
1882-577X
DOI10.3757/jser.80.112

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Summary:「はじめに」内耳奇形は, 内耳発生の停止により内耳形態に異常を生じる比較的稀な疾患である. 先天性難聴の精査を契機に診断されることが最も多いと考えられており, 先天性難聴の約20%を内耳奇形が占めると報告されている. 先天性難聴は患児に言語発達の遅延をもたらす可能性があるので, 早期診断および補聴器, 蝸牛形態に応じた人工内耳手術などの早期介入が重要である. そのため, 内耳奇形の研究は, 蝸牛奇形を中心に進められてきた. 一方, 内耳奇形による前庭機能障害は, 幼少期に粗大運動, 平衡感覚の発達の遅延をもたらす可能性があるものの, その後は前庭代償が働くことで就学前に運動発達は正常化するとされている. 乳幼児期に適したスクリーニング法がなく, また, 症状があっても自然軽快するため治療の必要性にも乏しいことから, 現在まで内耳奇形症例の前庭機能を研究した報告は少ない. しかし, 蝸牛系における人工内耳のように, 前庭系においても前庭代償が働かず症状が持続する両側前庭障害(Bilateral Vestibular Dysfunction: BVD)の治療法として, 人工前庭器, 前庭電気刺激, 内耳再生医療などの開発が進められており, ヒトの前庭機能の解明の重要性は高まってきている.
ISSN:0385-5716
1882-577X
DOI:10.3757/jser.80.112