完全内臓逆位症患者に生じた胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した一例

完全内臓逆位は稀な疾患であり,それ自体の病的意義は少ないが,手術の際は十分な解剖学的理解が必要となる.今回我々は,完全内臓逆位症患者に発症した胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行したので報告する.患者は70歳代女性.小児期の虫垂炎手術の際に内臓逆位を指摘されていた.心窩部不快感を主訴に前医で胃癌と診断され,当院を紹介受診した.腹部造影CT検査では,腹腔動脈の分岐形態は正常者と比較して鏡面像を呈する以外に明らかな破格は認められなかった.多脾症や腸回転異常などの合併異常も認めなかった.術前に術者・助手で解剖学的理解を共有し,また手術の際は小開腹を先行させるとともに,立ち位置を通常と逆とする...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 68; no. 4; pp. 271 - 275
Main Authors 米山, 智, 湯沢, 賢治, 小林, 仁存, 武藤, 亮, 岡田, 晃穂, 加藤, 丈人, 小崎, 浩一, 寺島, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.11.2018
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Summary:完全内臓逆位は稀な疾患であり,それ自体の病的意義は少ないが,手術の際は十分な解剖学的理解が必要となる.今回我々は,完全内臓逆位症患者に発症した胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行したので報告する.患者は70歳代女性.小児期の虫垂炎手術の際に内臓逆位を指摘されていた.心窩部不快感を主訴に前医で胃癌と診断され,当院を紹介受診した.腹部造影CT検査では,腹腔動脈の分岐形態は正常者と比較して鏡面像を呈する以外に明らかな破格は認められなかった.多脾症や腸回転異常などの合併異常も認めなかった.術前に術者・助手で解剖学的理解を共有し,また手術の際は小開腹を先行させるとともに,立ち位置を通常と逆とするなどの工夫を行い,腹腔鏡補助下幽門側胃切術(Roux-en-Y再建)を施行し得た.完全内臓逆症患者に対する腹腔鏡手術は報告が少なく,術前に十分なシミュレーションを行う事が重要と考えられた.
ISSN:1343-2826
1881-1191
DOI:10.2974/kmj.68.271