鈍的胸部外傷による急性重症呼吸不全に対し分離肺換気とdouble lumen catheterによるveno-venous extracorporeal membrane oxygenationで救命した1症例

【緒言】胸部への鈍的外傷は心臓・肺などの胸部重要臓器の存在もあり,呼吸関連の重症病態が発生しやすい。【症例】20歳代男性,5階建て建物屋上から飛び降り受傷。来院時ショック状態,肺挫傷・左肺裂傷と活動性出血,左腸腰筋の血腫と活動性出血,胸腰椎の破裂骨折,右肩甲骨と左鎖骨および第1肋骨骨折,左脛骨・腓骨の開放骨折を認めた。両肺挫傷・左肺裂傷が著明で気道出血も認め,分離肺換気下に左肺動脈上葉枝と舌枝にそれぞれ選択的に塞栓術を施行した。ICU入室後に呼吸不全が高度に進行したが,下大静脈損傷も存在している可能性があり,右内頚静脈から27 F double lumen catheter(DLC)を挿入し抗...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 51; no. 2; pp. 65 - 71
Main Authors 吉田, 徹, 田北, 無門, 川口, 剛史, 津久田, 純平, 中島, 拓郎, 昆, 祐理, 松本, 純一, 森澤, 健一郎, 藤谷, 茂樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2023
聖マリアンナ医科大学医学会
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Summary:【緒言】胸部への鈍的外傷は心臓・肺などの胸部重要臓器の存在もあり,呼吸関連の重症病態が発生しやすい。【症例】20歳代男性,5階建て建物屋上から飛び降り受傷。来院時ショック状態,肺挫傷・左肺裂傷と活動性出血,左腸腰筋の血腫と活動性出血,胸腰椎の破裂骨折,右肩甲骨と左鎖骨および第1肋骨骨折,左脛骨・腓骨の開放骨折を認めた。両肺挫傷・左肺裂傷が著明で気道出血も認め,分離肺換気下に左肺動脈上葉枝と舌枝にそれぞれ選択的に塞栓術を施行した。ICU入室後に呼吸不全が高度に進行したが,下大静脈損傷も存在している可能性があり,右内頚静脈から27 F double lumen catheter(DLC)を挿入し抗凝固療法でVV-ECMO施行としたが,開始直後に右高度気胸も出現,一時ECMO完全依存となった。徐々に酸素化は改善し第5病日にECMOから離脱,第31病日に自宅退院した。【考察・結語】本症例は外傷性呼吸不全に対して治療開始時は分離肺換気と血管塞栓術で対応した。しかし,対側肺挫傷の増悪に伴い著明に酸素化能低下したため,DLC使用V-V ECMOで救命し得た症例である。我々が調べる限り胸部外傷による呼吸不全への分離肺換気とDLC・ECMOの併用は国内では初めてとなるが,今後,胸部外傷による重症呼吸不全の際にはECMO使用含めた集学的治療による救命の可能性を認識すべきと考えられた。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.51.65