切除不能膵頭部癌に対する全胃温存十二指腸空腸吻合術

症例は50歳代の男性で,黄疸を契機に膵癌と診断された.外科的根治切除を目的に開腹したが,術中迅速病理組織検査で傍大動脈リンパ節に転移を認め,非切除となった.そこで総胆管空腸吻合とともに,QOLの維持及び通過障害の予防を目的とした,十二指腸離断を伴う全胃温存十二指腸空腸吻合を行った.その後外来化学療法を行いながら社会復帰を果たし,腫瘍増大は認めたものの黄疸や通過障害を来すことなく,術後2年5ヵ月の生存を得た.切除不能膵頭部癌に対する十二指腸離断を伴う全胃温存十二指腸空腸吻合は,病変部からバイパス路を十分に離すことで腫瘍進展に伴う狭窄を回避することが出来,また全胃温存効果により消化吸収機能の温存と...

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Published in山口医学 Vol. 62; no. 4; pp. 211 - 215
Main Authors 吉田, 久美子, 小野田, 雅彦, 勝木, 健文, 古谷, 彰, 河野, 和明, 加藤, 智栄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 01.11.2013
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Summary:症例は50歳代の男性で,黄疸を契機に膵癌と診断された.外科的根治切除を目的に開腹したが,術中迅速病理組織検査で傍大動脈リンパ節に転移を認め,非切除となった.そこで総胆管空腸吻合とともに,QOLの維持及び通過障害の予防を目的とした,十二指腸離断を伴う全胃温存十二指腸空腸吻合を行った.その後外来化学療法を行いながら社会復帰を果たし,腫瘍増大は認めたものの黄疸や通過障害を来すことなく,術後2年5ヵ月の生存を得た.切除不能膵頭部癌に対する十二指腸離断を伴う全胃温存十二指腸空腸吻合は,病変部からバイパス路を十分に離すことで腫瘍進展に伴う狭窄を回避することが出来,また全胃温存効果により消化吸収機能の温存と栄養状態の維持を可能とする,有用な術式ではないかと考えられた.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.62.211