機械研磨されたインプラント周囲炎に対して切除療法を行った1症例:8年間の経過観察

本症例報告では,59歳の女性にインプラント周囲炎が発症し,治療後8年経過観察した結果を報告する.初診時,10年ほど前に他院で埋入した機械研磨表面を有する46部インプラント周囲に深いポケットと著明な出血を認め,デンタルエックス線写真を撮影したところ,インプラント周囲炎を疑うインプラント周囲骨吸収が確認された.初期治療後,インプラント周囲炎と確定診断し,炎症の消退とポケットの減少を目的として,切除療法を行うこととした.まず,インプラント周囲粘膜に対し全層弁を形成,剥離し,キュレットでインプラント周囲の不良肉芽組織を除去した.骨欠損形態は全周にわたる垂直性骨欠損と頬側に裂開を認め,SCHWARZの分...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 34; no. 1; pp. 78 - 83
Main Authors 村井, 健二, 中居, 伸行, 横谷, 亜希子, 村田, 比呂司, 大月, 基弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 31.03.2021
日本口腔インプラント学会
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ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.34.78

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Summary:本症例報告では,59歳の女性にインプラント周囲炎が発症し,治療後8年経過観察した結果を報告する.初診時,10年ほど前に他院で埋入した機械研磨表面を有する46部インプラント周囲に深いポケットと著明な出血を認め,デンタルエックス線写真を撮影したところ,インプラント周囲炎を疑うインプラント周囲骨吸収が確認された.初期治療後,インプラント周囲炎と確定診断し,炎症の消退とポケットの減少を目的として,切除療法を行うこととした.まず,インプラント周囲粘膜に対し全層弁を形成,剥離し,キュレットでインプラント周囲の不良肉芽組織を除去した.骨欠損形態は全周にわたる垂直性骨欠損と頬側に裂開を認め,SCHWARZの分類Class Icに相当する状態であった.インプラント表面が機械研磨表面とわかったため,生理食塩水を含んだガーゼの小片で清掃し,その後粘膜弁を根尖側に位置づけ縫合した.抗菌薬は投与しなかった.3カ月後には粘膜の退縮とともにポケットの減少,炎症の改善を認め,以降良好なコンプライアンスの下,歯科衛生士によるメインテナンスが継続された.1年後にはデンタルエックス線写真上で,インプラント周囲の骨レベルの回復を認め,健常なインプラント周囲組織が維持されていることが確認できた.8年経過した現在では,退縮していたインプラント周囲粘膜レベルも改善した.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.34.78