魚骨による消化管穿孔が考えられた腹腔内膿瘍の1例

症例は74歳,女性。左下腹部痛を主訴に当院外来を受診した。身体所見では圧痛は認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。血液検査所見では炎症反応高値を認めた。超音波検査,CT検査ともに左下腹部腹壁直下に腹腔内膿瘍を認め,内部に異物(魚骨)を認めた。膿瘍と隣接する結腸も透視下に下部消化管内視鏡を施行したが結腸内腔には異常なく造影検査でも膿瘍との交通は確認できなかった。禁食,抗菌剤投与を行なったが,症状改善認めず,開腹手術を行なうこととした。開腹所見では,膿瘍内に魚骨を確認し,膿瘍と強固にS状結腸壁が癒着を認め,S状結腸を部分切除した。術後経過は良好で12日目に退院となった。摘出標本では腸管との交通は確...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 67; no. 1; pp. 87 - 91
Main Authors 柏木, 浩暢, 石井, 政嗣, 佐野, 淳一, 壁島, 康郎, 西岡, 道人, 平野, 佑樹, 飯尾, 宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2018
日本農村医学会
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.67.87

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Summary:症例は74歳,女性。左下腹部痛を主訴に当院外来を受診した。身体所見では圧痛は認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。血液検査所見では炎症反応高値を認めた。超音波検査,CT検査ともに左下腹部腹壁直下に腹腔内膿瘍を認め,内部に異物(魚骨)を認めた。膿瘍と隣接する結腸も透視下に下部消化管内視鏡を施行したが結腸内腔には異常なく造影検査でも膿瘍との交通は確認できなかった。禁食,抗菌剤投与を行なったが,症状改善認めず,開腹手術を行なうこととした。開腹所見では,膿瘍内に魚骨を確認し,膿瘍と強固にS状結腸壁が癒着を認め,S状結腸を部分切除した。術後経過は良好で12日目に退院となった。摘出標本では腸管との交通は確認されず,慢性的な膿瘍形成を認めた。自験例では魚骨の摂取も明確でなく,消化管との交通も証明できなかった点から慢性的な発症であることが考えられた。魚骨による腹腔内膿瘍の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.67.87