インプラント治療後の口腔内変化 : 長期症例から考える

歯科インプラントが臨床応用されて54年が経過し, 欠損補綴の1つとして良好な結果が得られてきた. しかし, 日本の歯科治療が直面している超高齢化社会に対してはさまざまな対応が必要になってきている. そこでわれわれはインプラント治療の長期症例から口腔内の変化として何が起こっているのかを考察し, 超高齢化社会に対応した超長期治療計画として役立たせたいと思う. 長期症例の多くでは患者の年齢と口腔内の変化に深い関係性があると思われる. しかし, 患者固有のリスクがあるため, 一概に年齢と口腔内の変化を統一して考えられないことも事実であることから, 長期症例の変化(約20年の変化)を以上の5つのグループ...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 32; no. 2; pp. 85 - 91
Main Authors 椎貝達夫, 田口達夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔インプラント学会 30.06.2019
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Summary:歯科インプラントが臨床応用されて54年が経過し, 欠損補綴の1つとして良好な結果が得られてきた. しかし, 日本の歯科治療が直面している超高齢化社会に対してはさまざまな対応が必要になってきている. そこでわれわれはインプラント治療の長期症例から口腔内の変化として何が起こっているのかを考察し, 超高齢化社会に対応した超長期治療計画として役立たせたいと思う. 長期症例の多くでは患者の年齢と口腔内の変化に深い関係性があると思われる. しかし, 患者固有のリスクがあるため, 一概に年齢と口腔内の変化を統一して考えられないことも事実であることから, 長期症例の変化(約20年の変化)を以上の5つのグループに分け, その中から変化に特徴がある2), 3), 5)について症例を通じて考えてみた. 1)若い年代で大きな変化が少ないグループ 2)中高年代で変化が穏やかなグループ 3)中高年代で無髄歯, ペリオで喪失するグループ 4)高年齢で根面う蝕の発生が高くなるグループ 5)その他として咬合力, 免疫等のリスクが高い大きな変化をするグループ 今回提示した長期症例から学ぶことは治療開始年齢と欠損歯数, 欠損形態, 残存歯の状態は長期安定に大きく影響するということである. つまり, 以下の長期経過から予測される下記1~4を踏まえて長期治療計画を考えることが重要になる. 1. 欠損歯数が少なく, 欠損形態が単純で残存歯の状態が良好の場合はトラブルが少ない傾向がある. 2. 欠損歯数が多く, 欠損形態が複雑の場合は残存歯のトラブルが多い傾向がある. 3. 残存歯の状態が悪く, 咬合力が強い場合には残存歯とインプラント部のトラブルが多い傾向がある. 4. 悪習癖があり, 咬合力が強い場合はインプラント治療が有効な治療法とはいえない傾向がある. しかし治療開始時期にすべてを把握できるわけではないため, インプラント治療後にも健康状態を把握しつつ, 常に口腔内の変化を予測し, 状況を見極めて対応も変化させていくことが重要と考える. また, その考えが超高齢化社会に対応した超長期治療計画として役立つと思われる.
ISSN:0914-6695
DOI:10.11237/jsoi.32.85