妊娠中の心房頻拍に対して少量のβ遮断薬が有効であった1例

症例は37歳,女性.既往歴に特記事項.妊娠15週頃から動悸の自覚があり,自己検脈では120~130/分の頻脈であった.採血では甲状腺機能は正常範囲,心エコーで器質的異常を認めなかったため,100/分程の洞性頻脈として経過観察となった.その後,妊娠29週に170/分台の頻脈が持続し,当科紹介となった.心電図上,心拍数160~180/分のlong RP’tachycardiaを認めた.アデノシン三リン酸10~20mg急速静注により数拍は洞調律となるものの,warm-up現象を呈してすぐに再発した.プロプラノロール2mg静注により130/分まで徐拍化したが,増量によるさらなる上乗せ効果はなかった.ピ...

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Published in心電図 Vol. 35; no. 4; pp. 258 - 263
Main Authors 井口, 恵介, 松永, 正紀, 白木, 克典, 水野, 聖子, 仲野, 友康, 望月, 優作, 柳沼, 和恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本不整脈心電学会 2016
日本心電学会
Subjects
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ISSN0285-1660
1884-2437
DOI10.5105/jse.35.258

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Summary:症例は37歳,女性.既往歴に特記事項.妊娠15週頃から動悸の自覚があり,自己検脈では120~130/分の頻脈であった.採血では甲状腺機能は正常範囲,心エコーで器質的異常を認めなかったため,100/分程の洞性頻脈として経過観察となった.その後,妊娠29週に170/分台の頻脈が持続し,当科紹介となった.心電図上,心拍数160~180/分のlong RP’tachycardiaを認めた.アデノシン三リン酸10~20mg急速静注により数拍は洞調律となるものの,warm-up現象を呈してすぐに再発した.プロプラノロール2mg静注により130/分まで徐拍化したが,増量によるさらなる上乗せ効果はなかった.ピルシカイニド追加でも停止は得られず,ベラパミルも無効であった.アブレーションや早期の帝王切開も念頭に,少量のβ遮断薬メトプロロール40mg/日内服を開始したところ,徐々に脈拍コントロール良好となり,20mg/日までの量で管理可能であった.妊娠前の健診時心電図は心拍数50/分台の洞調律であったが,妊娠17週の心電図ではP波形が異なり,心房頻拍を呈していたと考えられた.出産後は,自然に洞調律となった.妊娠に伴う異所性自動能亢進による心房頻拍に対して,少量のβ遮断薬が有効であった.
ISSN:0285-1660
1884-2437
DOI:10.5105/jse.35.258