歯科用チタンおよびチタン合金のフッ化物溶液中での耐食性とその表面分析

目的:インプラント治療では,純チタンやチタン合金製アバットメントが口腔内に露出した際に,フッ化物に対して変色および腐食することが危惧される.本研究では,純チタンとチタン合金のフッ化物溶液中での耐変色性およびイオン溶出挙動を比較検討するとともに,表面分析によりフッ化物によるチタンの腐食機構を明らかにすることを目的とした.方法:試料は純チタン(TI),Ti-6Al-4V (TAV)およびTi-7Nb-6Al (TNB)を鏡面研磨して用いた.研磨した試料を,生理食塩水(SAL)とNaFを含む生理食塩水(NAF)(ともにpH 5)に37℃で3日間浸漬した.耐食性は色差(ΔE*ab),光沢度(Gs (2...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 35; no. 2; pp. 111 - 118
Main Authors 大橋, 功, 木村, 英一郎, 武本, 真治, 吉野, 晃, 澤田, 智史, 遠藤, 富夫, 三嶋, 直之, 野本, 秀材
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 30.06.2022
日本口腔インプラント学会
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ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.35.111

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Summary:目的:インプラント治療では,純チタンやチタン合金製アバットメントが口腔内に露出した際に,フッ化物に対して変色および腐食することが危惧される.本研究では,純チタンとチタン合金のフッ化物溶液中での耐変色性およびイオン溶出挙動を比較検討するとともに,表面分析によりフッ化物によるチタンの腐食機構を明らかにすることを目的とした.方法:試料は純チタン(TI),Ti-6Al-4V (TAV)およびTi-7Nb-6Al (TNB)を鏡面研磨して用いた.研磨した試料を,生理食塩水(SAL)とNaFを含む生理食塩水(NAF)(ともにpH 5)に37℃で3日間浸漬した.耐食性は色差(ΔE*ab),光沢度(Gs (20°))の減少度および溶液中に溶出した金属イオン濃度で評価した.一部の試料はX線光電子分光分析(XPS)で表面分析を行った.結果:SALに浸漬したいずれの試料のΔE*ab値,Gs (20°)の減少度および金属イオン濃度から腐食は認められなかった.一方,NAFに浸漬したTAVおよびTNBのΔE*ab値および金属イオンの溶出量はTIより大きかった.XPS分析の結果,NAFに浸漬した試料はいずれも酸化が進行し,TAVおよびTNBではAlは検出されなかった.したがって,TAVはTiO2とV2O5,TNBはTiO2とNb2O5で構成されていた.結論:純チタンとチタン合金はSAL中では優れた耐食性を示したが,NAF中では腐食した.NAF中では,TAVとTNBのフッ化物に対する耐食性はTIよりも劣っていた.TAVおよびTNB表面は,Alを含まない不動態被膜で覆われていることが明らかになった.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.35.111