急激なHbA1c値の悪化に重度歯周炎症の関与を疑った一症例

• Published in: 日本歯周病学会会誌 Vol. 65; no. 2; pp. 69 - 79
• Main Authors: 滝川, 雅之, 大森, 一弘, 松原, ゆかり, 石田, 房子, 中川, 眞奈美, 佐々木, 知津, 井手口, 英隆, 徳善, 真砂子, 平松, 恭子
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 30.06.2023; 日本歯周病学会
• Subjects: 2型糖尿病; HbA1c; 慢性歯周炎
• ISSN: 0385-0110; 1880-408X
• DOI: 10.2329/perio.65.69

重度の歯周炎症が糖尿病の病態に悪影響を及ぼすことは知られている。今回，急激な血糖値（HbA1c）悪化の背景に，重度歯周炎症の関与を疑った症例を報告する。患者は78歳，男性。2021年3月，血糖値の急激な悪化（HbA1c=13.8%）をかかりつけ内科で指摘され，大学病院糖尿病内科に教育入院した。同科で歯周病検査の必要性を指摘され，同院歯科（歯周科部門）へ紹介された。同歯科での検査において，重度の歯周炎の進行を指摘され，専門的な歯周治療介入が早期に必要と判断された。歯周病専門医のいる当院での加療を希望し，2021年5月に受診した。歯周組織検査において，4 mm以上のPPDの割合は76%，BOP陽性率は81%，PCRは100%，PISAは3,217 mm2であった。エックス線検査所見では，全顎的に中等度の水平性骨吸収の進行を確認し，37，47には根尖におよぶ骨吸収像が存在した。診断は，広汎型重度慢性歯周炎（ステージIV，グレードC）とした。糖尿病の病態への影響を考慮しながら，局所抗菌薬併用SRPを主体とした歯周基本治療を行った。歯周治療に対する反応性は非常に良く，歯周炎症の改善（再評価時のPISA：605 mm2）とともに，HbA1c値は6.5%に改善した（2022年1月）。緊密な医科歯科連携によって，早期に専門的歯周治療介入を行えたことが良好な血糖値の改善につながったと考える。