凍結赤血球液製造におけるプログラムフリーザー法とディープフリーザー法の比較

解凍赤血球液(Frozen-Thawed Red Cells:FTRCs)は,中間製品である凍結赤血球液(Frozen Red Cells:FRCs)として10年間保存可能であるため,まれな血液表現型を持つ患者にとって有用な血液製剤である.しかしながら,FTRCsは,凍結・融解工程に起因する溶血により,製品規格である総ヘモグロビン(Haemoglobin:Hb)含有量を満たさない場合がある.本研究では凍結工程に着目し,溶血を抑制することでFTRCsのHb含有量の向上を目指した.採血5日目(5-day-old:5D)または9週目(9-week-old:9W)の赤血球液(Red Blood Cel...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 69; no. 1; pp. 38 - 46
Main Authors 田中, 光信, 木村, 貴文, 三橋, 久子, 平山, 文也, 瀧原, 義宏, 下垣, 一成, 保井, 一太, 渕崎, 晶弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 25.02.2023
日本輸血・細胞治療学会
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.69.38

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Summary:解凍赤血球液(Frozen-Thawed Red Cells:FTRCs)は,中間製品である凍結赤血球液(Frozen Red Cells:FRCs)として10年間保存可能であるため,まれな血液表現型を持つ患者にとって有用な血液製剤である.しかしながら,FTRCsは,凍結・融解工程に起因する溶血により,製品規格である総ヘモグロビン(Haemoglobin:Hb)含有量を満たさない場合がある.本研究では凍結工程に着目し,溶血を抑制することでFTRCsのHb含有量の向上を目指した.採血5日目(5-day-old:5D)または9週目(9-week-old:9W)の赤血球液(Red Blood Cells:RBCs)をグリセロール化し,プーリング後に2分割した.グリセロール化RBCsはプログラムフリーザー(Programmed Freezer:PF)法またはディープフリーザー(Deep Freezer:DF)法で凍結した.凍結4~8週間後,FRCsを融解して脱グリセロール化した.9Wの原料血液は,Hb回収率が低値で製品規格を満たさないFTRCsの模倣品とみた.結果,PF法はDF法より高いHb回収率を示した(5D:85.9±2.1 vs 81.1±3.5%,p<0.001)(9W:56.8±4.0 vs 52.4±3.5%,p<0.001).赤血球内ATPおよび2,3-DPG量はPF法とDF法で変わらなかった.以上のことからPF法はDF法よりもグリセロール化RBCsの凍結に適していると考えられ,まれ血を対象としたFTRCsの安定供給に貢献すると考えられる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.69.38