在宅脳卒中患者のストレス・コーピングと精神的健康との関係

本調査研究は,慢性期脳卒中患者において,障害が抑うつ状態を引き起こす心理的プロセスの解明をねらいとして,ストレス・コーピングと抑うつ状態との関係について検討することを目的とした。調査対象は,岡山県K市内の医療施設ならびに同市が開催している機能訓練事業を利用する在宅脳卒中患者807名とし,面接調査法により調査を突施した。障害が抑うつ状態を引き起こす心理的プロセスを,Lazarusらの「ストレス認知理論」の概念枠組みを基礎に整理し,障害,コーピング,抑うつ状態,そして主観的QOLに関する多重回帰モデルを構築し,その適合度と変数間の関連を検討した。障害とコーピングは,著者らが提起した「拡大ADL尺度...

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Published in理学療法学 Vol. 28; no. 7; pp. 348 - 355
Main Authors 津田, 陽一郎, 中嶋, 和夫, 齋藤, 圭介, 香川, 幸次郎, 原田, 和宏, 高尾, 芳樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.12.2001
日本理学療法士協会
Japanese Society of Physical Therapy
Subjects
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.kj00001309678

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Summary:本調査研究は,慢性期脳卒中患者において,障害が抑うつ状態を引き起こす心理的プロセスの解明をねらいとして,ストレス・コーピングと抑うつ状態との関係について検討することを目的とした。調査対象は,岡山県K市内の医療施設ならびに同市が開催している機能訓練事業を利用する在宅脳卒中患者807名とし,面接調査法により調査を突施した。障害が抑うつ状態を引き起こす心理的プロセスを,Lazarusらの「ストレス認知理論」の概念枠組みを基礎に整理し,障害,コーピング,抑うつ状態,そして主観的QOLに関する多重回帰モデルを構築し,その適合度と変数間の関連を検討した。障害とコーピングは,著者らが提起した「拡大ADL尺度」8項目版ならびにコーピング尺度を用い,抑うつ状態は「Geriatric depression Scale短縮版」,主観的QOLは「心理的QOL指標」を用い測定した。統計解析の結果,前記モデルは標本に対して統計的な許容水準を満たす適合度を示すと共に,障害が抑うつ状態を高め,同時に調整コーピングが抑うつ状態を低下させる関係にあることが示された。さらにコーピングのストレス緩衝効果について共分散分析を用い検討した結果,調整コーピングは抑うつ状態に対して障害と共に統計的に有意な交互作用を有することが確認された。これらの事から,脳卒中患者に関して,障害と抑うつ状態との間にストレス認知理論で想定されている心理的プロセスが存在する可能性が示唆された。
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.kj00001309678