股関節周辺部骨折の理学療法

「はじめに」股関節周辺部の骨折は高齢者に多く, その受傷機転の大半が転倒による. そのため, 理学療法では転倒予防を含めた歩行能力の獲得が重要課題となる. しかし, 多くのセラピストが大腿骨頸部骨折の高齢者の理学療法において, 「とりあえず歩くことは可能になったが, バランスが不安定で転倒リスクを抱えたまま退院」というケースを経験していることだろう. 股関節は重心制御の主座であり, その機能は股関節周囲筋や靭帯・関節包などの関節支持組織の健全性によって保障されている. 手術侵襲により, これらの組織の機能が損なわれ, 重心制御能が著しく低下してしまうことが股関節周辺部骨折患者の抱える本質的な問...

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Published in理学療法学 Vol. 39; no. 4; pp. 230 - 234
Main Author 石井, 慎一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.06.2012
日本理学療法士協会
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Summary:「はじめに」股関節周辺部の骨折は高齢者に多く, その受傷機転の大半が転倒による. そのため, 理学療法では転倒予防を含めた歩行能力の獲得が重要課題となる. しかし, 多くのセラピストが大腿骨頸部骨折の高齢者の理学療法において, 「とりあえず歩くことは可能になったが, バランスが不安定で転倒リスクを抱えたまま退院」というケースを経験していることだろう. 股関節は重心制御の主座であり, その機能は股関節周囲筋や靭帯・関節包などの関節支持組織の健全性によって保障されている. 手術侵襲により, これらの組織の機能が損なわれ, 重心制御能が著しく低下してしまうことが股関節周辺部骨折患者の抱える本質的な問題といってもよい. こうしたケースに対する理学療法は歩行能力の獲得を目指すと同時に, 転倒回避のための姿勢制御能を獲得することが重要課題である. 本稿では重心制御と股関節機能について解説をし, 股関節周辺部骨折患者の歩行能力の獲得と転倒予防という観点から術後理学療法のあり方について論じたい.
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.KJ00008113246