痴呆の重症度とADLの項目別難易度との関連

本研究の目的は,痴呆性高齢者の痴呆の重症度とADLの項目別難易度との関連を明らかにすることである。対象は,介護老人保健施設に入所している65歳以上の要介護高齢者145名(平均年齢83.2 ± 7.7歳)である。方法は,痴呆の重症度は「行動観察による痴呆患者の精神状態評価尺度」(NMスケール),ADLの項目別難易度はFIMの運動項目の自立度を用いて評価した。その結果,痴呆の重症度と「浴槽,シャワー移乗」「階段移動」以外の11項目の自立度との間で有意な関連が認められた。これら11項目の自立度と痴呆の重症度間での比較では,痴呆を有さない正常境界群に対し軽症群で有意な低下が認められた項目は存在せず,軽...

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Published in理学療法学 Vol. 32; no. 2; pp. 83 - 87
Main Authors 横井, 輝夫, 櫻井, 臣, 北村, 恵子, 岡本, 圭左, 北川, 幸子, 加藤, 美樹, 長井, 真美子, 近藤, 千秋, 水池, 千尋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.04.2005
日本理学療法士協会
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Summary:本研究の目的は,痴呆性高齢者の痴呆の重症度とADLの項目別難易度との関連を明らかにすることである。対象は,介護老人保健施設に入所している65歳以上の要介護高齢者145名(平均年齢83.2 ± 7.7歳)である。方法は,痴呆の重症度は「行動観察による痴呆患者の精神状態評価尺度」(NMスケール),ADLの項目別難易度はFIMの運動項目の自立度を用いて評価した。その結果,痴呆の重症度と「浴槽,シャワー移乗」「階段移動」以外の11項目の自立度との間で有意な関連が認められた。これら11項目の自立度と痴呆の重症度間での比較では,痴呆を有さない正常境界群に対し軽症群で有意な低下が認められた項目は存在せず,軽症群に対し中等症群では8項目,中等症群に対し重症群では9項目で有意な低下が認められた。また,自立度の順序性は,正常,境界群と軽症群では変化がみられなかったが,中等症以降「食事」以外のセルフケア,及び排泄コントロールを中心に自立度は著明に低下し,自立度の順序性も崩れていった。以上の知見より,痴呆性高齢者のADLの項目別難易度は,特に痴呆の重症度が中等症以降「食事」以外のセルフケア,及び排泄コントロールを中心に顕著に高くなり,その項目別難易度の順序性も崩れていく過程をたどることが示唆された。
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.KJ00003946834