廃用性筋力低下を呈する大腿四頭筋の電気力学的応答に関する研究

本研究の目的は,電気力学的応答を明らかにすることにより,廃用性筋力低下を呈するヒト大腿四頭筋に関して,刺激が与えられた後に関節トルクを発生するまでの一連の応答過程における機能的変化を検索することである。対象は膝前十字靱帯再建術後2カ月を経過し,大腿の周径と筋力が有意に減少している男女10名とした。光刺激後,急速に等尺性最大随意収縮を行わせ,電気力学的応答を検討した。その結果(1)刺激に対して反応し筋張力が発生するまでの応答時間が有意に延長していた。これにより,これらの症例では視覚的な刺激に対する防御反応に遅れを生じる可能性が示唆された。(2)大腿直筋で筋電図反応時間が延長したことから,大脳にお...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. 1; pp. 9 - 16
Main Authors 川口, 浩太郎, 大成, 淨志, 金子, 文成, 月坂, 和宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 31.01.2000
日本理学療法士協会
Japanese Society of Physical Therapy
Subjects
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.KJ00003131650

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Summary:本研究の目的は,電気力学的応答を明らかにすることにより,廃用性筋力低下を呈するヒト大腿四頭筋に関して,刺激が与えられた後に関節トルクを発生するまでの一連の応答過程における機能的変化を検索することである。対象は膝前十字靱帯再建術後2カ月を経過し,大腿の周径と筋力が有意に減少している男女10名とした。光刺激後,急速に等尺性最大随意収縮を行わせ,電気力学的応答を検討した。その結果(1)刺激に対して反応し筋張力が発生するまでの応答時間が有意に延長していた。これにより,これらの症例では視覚的な刺激に対する防御反応に遅れを生じる可能性が示唆された。(2)大腿直筋で筋電図反応時間が延長したことから,大脳における運動のプログラミングが変化している可能性が示唆された。(3)患側における電気力学的遅延の延長から,運動に参画する筋線維タイプの変化,直列弾性要素の変化,および筋収縮過程における機能的変化などが生じている可能性が示唆された。(4)(2)および(3)の結果に加え,今回検討した3筋における筋電図反応時間のばらつきが,筋張力の発揮効率を低下させ,廃用性筋力低下を引き起こす一つの原因であるものと考えられた。
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.KJ00003131650