留学とキャリアパス―ホップ・ステップ・ジャンプ
近年, 非医療分野と同様に医療分野においても海外留学者数は減少傾向にある. その背景には, 語学力への不安といった意識面の問題に加え, 長引く日本経済の不況および欧米諸国の物価上昇などの経済的な問題や日本独特の雇用システムや就職活動の早期化・長期化といった社会的環境の問題が複雑に絡み合っている.しかし, 海外留学は医師のキャリアにとって大きなメリットがある. 人文学的研究からは, 海外留学が医師の自己相対化能力やリーダーシップ, プロフェッショナル・アイデンティティの形成に寄与することが示唆されている. また, 筆者自身の経験からも, 海外留学は研究能力やマネジメント能力の向上, 新たな研究テ...
Saved in:
Published in | Nippon Jibiinkoka Tokeibugeka Gakkai Kaiho(Tokyo) Vol. 128; no. 2; pp. 94 - 99 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.02.2025
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2436-5793 2436-5866 |
DOI | 10.3950/jibiinkotokeibu.128.2_94 |
Cover
Loading…
Summary: | 近年, 非医療分野と同様に医療分野においても海外留学者数は減少傾向にある. その背景には, 語学力への不安といった意識面の問題に加え, 長引く日本経済の不況および欧米諸国の物価上昇などの経済的な問題や日本独特の雇用システムや就職活動の早期化・長期化といった社会的環境の問題が複雑に絡み合っている.しかし, 海外留学は医師のキャリアにとって大きなメリットがある. 人文学的研究からは, 海外留学が医師の自己相対化能力やリーダーシップ, プロフェッショナル・アイデンティティの形成に寄与することが示唆されている. また, 筆者自身の経験からも, 海外留学は研究能力やマネジメント能力の向上, 新たな研究テーマの発見, そして将来のキャリアパスの選択肢を広げる上で非常に有意義であったと言える. 基礎研究留学であっても, 臨床にも応用されていく経験となり得ることから, 基礎研究留学は決して基礎研究だけにその影響が留まるものではない. 海外留学における経済的な不安は, 近年, 日本耳鼻咽喉頭頸部外科学会の海外留学支援制度をはじめとした, さまざまな奨学金制度や無給の研究者雇用枠の減少により, 以前と比べて軽減されつつある.本総説は, 海外留学を検討する耳鼻咽喉頭頸部外科医に対し, その意義と現状を共有し, 将来のキャリアパスを考える上での一助となることを目指すものである. |
---|---|
ISSN: | 2436-5793 2436-5866 |
DOI: | 10.3950/jibiinkotokeibu.128.2_94 |