歯周病学から学ぶインプラント治療

インプラントは治療学が優先され,歯周病学は疾患学を学んだ後治療学を学ぶ.よってインプラント周囲炎が発症したとき,歯周ポケット形成と骨吸収という病態がよく似ているため,歯周炎の知識が必要となる.またこの知識はインプラント周囲炎の治療や予防にも役立つ.その発症メカニズムは,歯周ポケット内のバイオフィルムの細菌叢の破綻(dysbiosis)によって起こる.慢性化してくると細菌のもっている構造物がPAMPs(pathogen-associated molecular patterns)となり,組織の破壊物質がDAMPs(danger- or damage-associated molecular pa...

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Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 35; no. 2; pp. 61 - 72
Main Authors 黒田, 絵里, 飯田, 正人, 合田, 征司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 30.06.2022
日本口腔インプラント学会
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ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.35.61

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Summary:インプラントは治療学が優先され,歯周病学は疾患学を学んだ後治療学を学ぶ.よってインプラント周囲炎が発症したとき,歯周ポケット形成と骨吸収という病態がよく似ているため,歯周炎の知識が必要となる.またこの知識はインプラント周囲炎の治療や予防にも役立つ.その発症メカニズムは,歯周ポケット内のバイオフィルムの細菌叢の破綻(dysbiosis)によって起こる.慢性化してくると細菌のもっている構造物がPAMPs(pathogen-associated molecular patterns)となり,組織の破壊物質がDAMPs(danger- or damage-associated molecular patterns)となり,マクロファージや線維芽細胞と反応して炎症性サイトカイン(IL-1β,TNF-α,IL-6,IL-17,etc.)やPGE2などの破骨細胞活性化因子が産生される.これらのサイトカインにより,RANKLRANK依存的に破骨細胞を分化・活性化する.歯周炎を伴う糖尿病において,糖化物質(AGEs:advanced glycation endproducts)がそのレセプター(RAGE:receptor of AGEs)と反応することになり,炎症性サイトカインが過剰に出て無菌性炎症(sterile inflammation)が成立し,骨吸収につながる.歯周炎・インプラント周囲炎や糖尿病も慢性炎症であり,全身疾患の引き金になるため治療や予防が重要である.また治療に関して,顎堤の鞍状骨欠損(ridge defect)は歯周疾患に分類されており,その治療には骨移植が必須の技術になる.特に広範な欠損をインプラント再建する場合,GBRなどでは限界があり,腸骨移植や仮骨延長などの拡大手術が必要になってくる.そういった意味では歯周外科から歯槽外科的な教育や実践が必要となる.歯周病の治療に,単純に戦略的抜歯と称してインプラントをしてはいけない.インプラント治療を行う前に,まず厳格な診断の下に歯周治療が優先されるべきだ.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.35.61