分子生物学的観点から脳蘇生・脳保護に臨む

脳障害を誘発するさまざまな病態が存在するが,これらの病態に共通しているのは脳虚血を基盤としていることである。これまで,虚血性脳障害は,興奮性アミノ酸であるグルタミン酸の過剰放出に伴う神経細胞内情報伝達系の賦活化と神経細胞内のカルシウムイオンの増加によってアポトーシスやネクローシスが誘発されると考えられてきた。近年,虚血性脳障害には,細胞内カルシウム依存性酵素のカルシニューリンとミトコンドリア内に存在するシクロフィリンDが重要な役割を担うことが明らかとなってきた。本稿では,虚血性脳障害に関わる機序について分子生物学的なアプローチを含めてその結果を紹介し,脳保護の在り方についても議論を加えてみた。...

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Published in蘇生 Vol. 29; no. 2; pp. 78 - 90
Main Authors 益本, 憲太郎, 田上, 正, 奈倉, 武郎, 近江, 明文, 内野, 博之, 岩瀬, 直人, 富野, 美紀子, 半田, 典子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 2010
The Japanese Society of Reanimatology
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ISSN0288-4348
1884-748X
DOI10.11414/jjreanimatology.29.78

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Summary:脳障害を誘発するさまざまな病態が存在するが,これらの病態に共通しているのは脳虚血を基盤としていることである。これまで,虚血性脳障害は,興奮性アミノ酸であるグルタミン酸の過剰放出に伴う神経細胞内情報伝達系の賦活化と神経細胞内のカルシウムイオンの増加によってアポトーシスやネクローシスが誘発されると考えられてきた。近年,虚血性脳障害には,細胞内カルシウム依存性酵素のカルシニューリンとミトコンドリア内に存在するシクロフィリンDが重要な役割を担うことが明らかとなってきた。本稿では,虚血性脳障害に関わる機序について分子生物学的なアプローチを含めてその結果を紹介し,脳保護の在り方についても議論を加えてみた。
ISSN:0288-4348
1884-748X
DOI:10.11414/jjreanimatology.29.78