急性期脳梗塞患者の体位変化による脳内酸素飽和度の変化量

本稿は脳梗塞発症早期の座位訓練に伴う体位変化が,脳内の血行動態にどの様な影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。研究は当院神経内科に脳梗塞で入院された内頚動脈系脳梗塞患者35例,平均年齢72.8歳と,コントロール群として患者群とほぼ同年齢の医学的管理を受けていない健常生活者10例,平均年齢71.0歳を対象とした。研究方法は体位を安静仰臥位から受動座位30度,受動座位60度そして椅座位まで変化させ,各々の直後,3分後,5分後の前頭葉下面の脳内酸素飽和度変化を仰臥位の値を基準にして求めた。患者群をラクナ群12例,アテローム群12例,心原性群11例の3群に分類しコントロール群と脳内酸素飽和度の...

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Published in理学療法学 Vol. 35; no. 2; pp. 42 - 49
Main Authors 石田, 典子, 中村, 菜摘, 平野, 裕滋, 家田, 俊明, 児玉, 亮, 木山, 喬博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.04.2008
日本理学療法士協会
Japanese Society of Physical Therapy
Subjects
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.kj00004908650

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Summary:本稿は脳梗塞発症早期の座位訓練に伴う体位変化が,脳内の血行動態にどの様な影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。研究は当院神経内科に脳梗塞で入院された内頚動脈系脳梗塞患者35例,平均年齢72.8歳と,コントロール群として患者群とほぼ同年齢の医学的管理を受けていない健常生活者10例,平均年齢71.0歳を対象とした。研究方法は体位を安静仰臥位から受動座位30度,受動座位60度そして椅座位まで変化させ,各々の直後,3分後,5分後の前頭葉下面の脳内酸素飽和度変化を仰臥位の値を基準にして求めた。患者群をラクナ群12例,アテローム群12例,心原性群11例の3群に分類しコントロール群と脳内酸素飽和度の変化量を比較した。これら3群とコントロール群間で一元配置分散分析および多重比較を行った結果,椅座位直後の酸素飽和度の変化量はアテローム群とコントロール群との間に差を認めた。これらの事実はアテローム性の動脈硬化によると考えられる血管内膜障害,特に血管内皮細胞の障害を伴う血管病変が,脳内の血行動態に影響を与えていると推測された。したがって,アテローム血栓性脳梗塞発症早期患者の座位訓練においては十分な観察と注意が必要と思われる。
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.kj00004908650