脳梗塞に対する幹細胞治療のトランスレーショナルリサーチ
脳梗塞に対する幹細胞を用いた再生医療が期待されており,さまざまな臨床試験が世界中で行われている.脳梗塞の細胞治療製品開発においても,First in Humanのトライアルを含んだ前臨床から早期臨床までのトランスレーショナルリサーチが重要である.膨大な基礎研究結果が臨床応用できるかどうか,俗に「死の谷」とも呼ばれる非常に重要な段階である臨床研究へと進んでいくためには,開発された細胞治療製品が「ヒトで治療効果が出る」ことを強く示唆する前臨床研究・動物モデルにおけるProof of Conceptがあることが何より前提となる.そして,基礎研究によって脳梗塞の病態に応じた神経保護,細胞分化や血管新生...
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Published in | 脳卒中の外科 Vol. 52; no. 2; pp. 89 - 93 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
2024
日本脳卒中の外科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0914-5508 1880-4683 |
DOI | 10.2335/scs.52.89 |
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Summary: | 脳梗塞に対する幹細胞を用いた再生医療が期待されており,さまざまな臨床試験が世界中で行われている.脳梗塞の細胞治療製品開発においても,First in Humanのトライアルを含んだ前臨床から早期臨床までのトランスレーショナルリサーチが重要である.膨大な基礎研究結果が臨床応用できるかどうか,俗に「死の谷」とも呼ばれる非常に重要な段階である臨床研究へと進んでいくためには,開発された細胞治療製品が「ヒトで治療効果が出る」ことを強く示唆する前臨床研究・動物モデルにおけるProof of Conceptがあることが何より前提となる.そして,基礎研究によって脳梗塞の病態に応じた神経保護,細胞分化や血管新生作用といった細胞移植の効能を証明するとともに,製剤規格決定のためにGLP(Good Laboratory Practice)に準拠して非臨床安全性試験を行う必要がある.一方で脳梗塞治療においては,ターゲットとする病期(超急性期から慢性期)により,虚血による脳障害が未完成のうちに血流の改善または神経保護的な作用を期待するもの,完成した脳機能障害に対して回復を期待するものなど,多様な治療コンセプトが存在する.現在,脳梗塞に対しては,おもに体性幹細胞を用いた製品開発が先行しているが,臨床試験における細胞治療の至適な細胞ソース,投与経路,投与時期,投与回数,細胞数などはさまざまである.脳梗塞に対する幹細胞治療について,現状を概説する. |
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ISSN: | 0914-5508 1880-4683 |
DOI: | 10.2335/scs.52.89 |